恋人なのはこの場だけ

「虎太郎ちゃん、わたし、今年の誕生日プレゼントはこれが欲しいなぁ」

 六限が始まるまでのわずかの時間。
 従姉妹の姫ちゃんこと鬼瓦姫香は、後ろの席の僕に自身のスマホを見せつける。

 SNSのとある投稿には、大きなリボンの付いたキーホルダーが写っている。

 チェーンの下にはシンプルな石が付いている以外はこれといった特徴もない。少し器用な子が友達同士で作ったと言われても納得できるほど。

 オシャレには人一倍うるさい女子高校生の姫ちゃんが欲しがるとは思えない。なにより、姫ちゃんの誕生日プレゼントリクエストはすでに聞いていた。

「でも今年はクリスマスコフレにするって言ってなかった?」
「それはお兄ちゃんに買ってもらうことにして、虎太郎ちゃんにはこっちを頼むことにしたの。もちろん、断らないわよね?」

 念押しするようにじっと見つめる姫ちゃん。
 高いと噂のクリスマスコフレの中でもいっそう高い、なんたらセットを頼まれる想定はしていても、安そうなものに変更になるとは思いもしなかったのだ。

 姫ちゃんの推しているアイドルのグッズであれば、リボン一つで期間限定化粧品くらいの値段はするのかもしれない。

 だが姫ちゃんは推しグッズを他人に買ってもらうようなことはしない。

 高校生になってバイトを始めてからは、お小遣いを回すことさえなくなった。『自分で稼いだお金を推しに貢ぐ』を徹底しているのである。

 高校生活も一年半と少し経った今になって、その信条を崩すとも思えない。
 だからこそ余計に、彼女が写真に写るアイテムを欲しがる理由が分からなかった。