お皿とマグカップを洗い終わって居間に戻っても、ケイティはソファでスマホを見ていた。
「ねえ」
 彼女はすぐ私を見た。
「日本に戻る前に、ロンドンでしたいことない? 行きたいとこは?」
 私はすぐに答えず瞬きをした。
 何しろ、技術を磨くため、勉強のためと思ってこっちに来ているのだ。遊ぶための計画なんて改めて組もうと思ってなかった。
「……特に、そういうのはない」
「でも、あと二週間も自由時間があるわけでしょ? 無駄にしちゃったんじゃ残念よね」
 ケイティはまた考え込む素振りを見せた。
「うん、残念」
 続く静けさが少し気まずい。それを破ろうと私が会話を再開させた。
「……どういうこと?」
「舞子、一人での旅行や遠出とかの予定ある?」
 首を横に振る。
「夏のロンドンも初めてでしょ? だったらやっぱり楽しまないと」
 ケイティは自信ありげな笑顔を見せた。