お皿もマグカップも空っぽになった昼下がり。
「私も、一度日本に遊びに行ってみたいな」
ケイティが呟いた。
「え?」
私も声を上げて、彼女のほうを見た。
二人ともなんとなく片付けを再開するようなエネルギーが出てなくて、ケイティはソファに移動してスマホを見ていた。でも私の声に反応した彼女とはすぐに目が合った。
「飛行機、何時間くらい?」
「えっと……十二、三時間のはずだけど」
「長い……って、それはそうよね。でもね……」
またスマホに目を向けて、指を動かす。その姿を見てると、私もどこか温かくなった。
彼女のそういう気持ちは、もちろん純粋に嬉しい。でも実現されるかどうかを考えると、それはまた別の話じゃないかと、感情にブレーキをかけようとしてる自分もいることに気づく。
私は立ち上がって、空の食器をまとめだした。
「じゃあ、その時は私が案内役をする」
「本当?」
ケイティの顔が明るくなる。
「うん。あ、食器は私がやっておくから」
自分の中でソワソワする何かを収めようと、目の前の作業に集中を向ける。
「……約束ね!」
キッチンに行く直前、背後からそう呼ぶ声がした。