窓を開けた部屋で選別作業をしながら、二人でここ一年を振り返る。
私たちは二人とも、ある程度の経歴を持ち、一定以上の仕事を受け持ったことがある脚本家。そして去年の九月から今年の七月の終わりまで、キャリアアップを目的に一年の課程を受講し終わったところ。もちろん、私は留学生、ケイティは現地学生として。
厳密にはまだ在学中なのだけど、課題や論文、レポートも全部完了しているし、単位は問題なく取得、講義もないので実質的には卒業も同然だ。ともに最終成績は、優良。
だけど、それを仕事や知名度の向上に繋げるのは別の話。
傍から見たら一年近いブランクを作っているのだ。その間にしてきたことを無駄や無意味だと決めつけられようものならきっと、二度と声がかからなくなるかもしれない。
ただでさえ競争が激しく止まないエンタメやコンテンツ作りの業界で、私より優れた脚本家なんてたくさんいるのに。
「もう一回訊くけど」
服を運び出しながらケイティが言う。
「どうしてこんなに早く帰っちゃうの? ここの契約だってあと一か月ちょっとなのに、あと二週間で帰国でしょ」
私たちが住むロンドン北部にあるこのフラット(日本で言うアパートやマンションのような物件のこと)は二人用で、賃貸期間は今年の八月終わりまでだ。
私の帰国後、ケイティは次のフラットメートが決まるまで一人で過ごすことになる。その事実に、少し罪悪感が湧く。