「私も、日本に遊びに行く」
 静寂に落とされた呟きに、私の中の何かが騒いだ。
「……そう?」
 適切な反応がわからず、慎重に返してしまう。
「うん。だからまた一緒に楽しもう。約束ね?」
 確認を取るような口調で言われ、ざわめきを覚える。
 私は仰向けでできるだけの深呼吸をした。
「うん。……約束」
 それを受けて、なんとなく、ケイティは笑顔になっているのがわかった。私も、期待と少しの圧力、そしてなだめようとする冷静さを含めて笑ってみる。
 寝転んだままでいて、力が抜けていくのを感じた。気のせいか、体が重い。
 ただ、この時間とこの場所が気持ちいい。
 夕食はいらない気がした。明日は……
 ちゃんと動けるか気になりだした時、ふとケイティが言った。
「……明日は、うちで過ごそうか」
「……それがいいよね」
 二人、笑い声をあげる。
「ねえ、舞子」
「何?」
「またこうやって、外でのんびりして過ごしましょう。今度は大きい公園で」
 私はもう一度、今いる場所の心地よさを思い返した。
「……賛成」
 そう返すと、笑顔になったのだとわかる声が返ってきた。
「日本に戻る前の最後の楽しみは、それね」
 周りでは、夏のイギリスの昼下がりがゆったりと流れ過ぎていた。