気づくと、気温はさらに下がっていて、庭の芝生はさっきより暗い緑色をしていた。
カチッと音を立てて二本のスプーンをボウルに入れると、一気に達成感が込み上がってきた。
口の中にはまだ色んな甘さが充満しているし、お腹はもうはち切れそうだ。私はアルコールに決して弱いほうではないはずなのに、変な酩酊感さえある。
私は両足を投げ出してラグに手をつき、空を仰いだ。まだ黄昏と言えるような色ではないけれど、そこにある青は少しとろっとしている気がする。
「サマーフルーツ……今食べた分でこの先一年もちそう」
そうこぼすと、斜め下から小さな笑い声が聞こえた。
「じゃあ、来年同じ時期になったらまたやる?」
見ると、ケイティが完全に仰向けでラグに寝転がり、私を見ていた。結び目が邪魔になるポニーテールはほどかれていて、豊かな茶色の髪は扇状に広がっている。
「……その時はレシピを半減しましょう」
「そう言ってるってことは、またやりたい気持ちはあるってことでいい?」
私は口をつぐんだ。
気持ちだけなら、それは純粋に、ある。それは確かにそう。
でも、気持ちだけじゃ実現できないことが社会には多すぎることも、わかってる。
それを思うと、返事が出ない。
何も言わないまま再び空を眺めていると、斜め下の声が続いた。
「あなたも寝転んでみたら?」
そう私に呼びかけるケイティはとても気楽で気持ちよさそうにしている。
その姿に近づきたいと思った。
彼女が今見ている、私と同じ空は、そこから眺めればもっと広いだろうか。