私は自分たちの間に置かれたボウルを見下ろした。トライフルを飾る雪山みたいな生クリームのドームもまた、点々と赤いベリーで彩られている。ここから下層まで掘り進んで掬えば、スポンジケーキの欠片と二種類のクリームに混ざって、ジャムで漬けてより濃厚な味にしたサマーフルーツが盛りだくさんに私たちを待ち受ける。
「いいじゃない、たくさん食べれば」
 ケイティはあっけらかんと言って、武器を構えるような勢いでスプーンを掴んだ。
「大人の女の子だけの楽しみって感じしない?」
 言われて、想像してみる。
 子供の頃、十代の頃に同級生と、家族間で、仕事の付き合いで……
 どんな状況を思い浮かべても、巨大なデザートとおかわり自由のアルコール入りドリンクだけを堪能するというシーンの実現には、必ず何かが邪魔をする。年齢、見得、周囲の評判、保ちたいイメージ、年配者や男性の目……
 また涼風が横切り、芝生の匂いが舞う。
 今、この場所この瞬間は、何も気にしなくてもいい。
 私も自分のスプーンを構えた。
「確かに!」
 そうと認めれば、あとはこの時間を目一杯楽しむだけ。
 二人、笑ってボウルを見つめる。
「行くよ?」
「うん。……わ、ちょっと待て、溢れる!」
「え? じゃあ、お皿で取って」
「ああ、ベリーが落ちてる!」
「待って待って、これ同時に取ろうとしちゃダメね。一人がボウルを持って……」
 そうして苦戦しながら、私たちは慎重にそれぞれの最初の一皿分を取り分けた。