「Cheers!」
 二人の声に呼応するみたいに、気持ちいい風を横切る。
 ガラスの当たる音がして、中の琥珀色の液体が揺れた。
 太陽も気温も少し下がった三時過ぎ、私たちは無事完成したトライフルと一緒にフラットの庭で足を伸ばして座っていた。
 敷いたラグの中央では、トライフルが入った大きな耐熱ガラスのボウルが大きく存在感を放っている。その両脇には二枚の取り皿と大サイズのスプーンが二本、そして少し離れた一番平らの一面に、三分の二ほどいっぱいの水差し。満たしているのは、私たちのグラスの中身と同じ、夏味のイギリスのカクテルドリンクだ。
 私はグラスを傾けて、最初の一口を味わってみた。サラサラと、滑らかな液体が舌先から喉へ流れていく。
 好奇心に満ちたケイティの声がした。
「どう? 初めてのピムス」
 私は目を見開く。
「……美味しい。あと、すごく飲みやすい。アルコール感がないみたいで、さっぱりして」
 唇からグラスを離して、改めてその中身を見た。
 ケイティ曰くイギリスの夏に欠かせないという「ピムス」は、同名の付くリキュールを多めのレモンソーダで割り、そこにスライスした苺、オレンジと胡瓜を加え、ミントの葉で香りを付けて完成する。
 お酒の入ったカクテルというより苦めのフレイヴァ―付きアイスティーのような味わいで、滲み出た果物の甘味もほどよいアクセントになっている。さっぱりした余韻は胡瓜とミントのおかげだろうか。
「結構好き、これ」
「本当? よかった!」
 ケイティが嬉しそうな声を上げる。見ると、彼女のグラスはもう半分ほど空っぽになっていた。
「全部飲み終わったら、残ったフルーツも食べるよ。これもね、時間がたった後だとお酒の味が染み込んでてもっと美味しくなってるはずだから」
 そう言って、水差しに顔を向ける。そこに残っているグラス三、四杯分ほどのピムスの中には果肉と緑の欠片が宝石みたいに光っている。
「フルーツと言えば……ここにもう十分な量があると思うんだけど」