彩りがよくなったカゴを持って、次の棚に向かう。
 その道中で私はふと口にした。
「日本だと、苺が一番たくさん売られるのって冬だと思う」
「えぇ?」
 最近よく聞く、驚いたケイティの声がした。
「なんで?」
 そう言って、カゴの中の赤い粒を見る。彼女の中では、寒い季節とこのフルーツという組み合わせがどうしても成立しないようだ。
「単純にその時の需要が高いからじゃないかな。ケーキに使ったり……」
 そこから食文化や栽培方法の違いなど、一般的にわかる程度の事情を説明すると、ケイティは熱心に聞いてくれた。
「へえ……苺なんてサマーフルーツの代表だと思ってたのに」
「正直、いつの季節でも値段は高いし。その分、味は絶対保証できるんだけど、やっぱり私は買うのはためらう」
「じゃあ、こっちにいる間に好きなだけたくさん食べていって」
 笑顔でそう言われてすぐ、くすぐったい間が空いた。
 感覚と知で頭を回す。
 そしてその末の返答を口にした。
「ケイティも超高くて超美味しい苺、食べにくれば?」
「それ、名案!」
 溌剌とした声がスーパーの回廊に響く。
「他にも日本でしたいことや食べてみたいものあるし。……行くの、いつでもいい?」
 まっすぐ見られて、一瞬返事に迷った。
「……どうぞ!」
「約束ね」
 そうこうしているうちに買い物も終了して、私たちはもう残り何回かの家路を急いだ。まだ外は明るくて、その得したような気分がいいと思った。
「よし、早く片付けよう。私もすることがあるし」
 室内に上がり台所に移動すると、ケイティはてきぱきとエコバッグの中身を仕分けだした。
「え、そうなの? 何? 手伝い、いる?」
 私がそう言うと、彼女は首を横に振った。
「大丈夫。私とパソコンだけで済む内容だから」