素で声が出て、色んな気持ちが巡りだす。
 秋ということは、今年は不可。去年は知らなかった。どうして? せっかくのチャンスだったはずなのに、職業柄調べるくらいはしておけばよかったのに。
「無理じゃない、そんなの」
「いいじゃない、またいつでも来れば」
 そう言うケイティはやっぱり笑ってる。
 二人、広い川沿いの道まで降りて、西に向かって歩き出す。
 南の川辺、サウスバンクと呼ばれるこのエリアはロンドンが誇る一つの芸術や文化の街だ。映画館、劇場、書店、ギャラリー、大道芸人、ストリートアートと、あるものは色々。以前も二人で遊びに来たことがあるけど、たぶん全部は見れてない。
 あの時は深い秋の夕方だったけど、今日のこの地も風情がある。
 少し汗ばんだ顔を清涼な風が撫でる。夏半ばを過ぎた水辺は気持ちよく、建物に遮られてない空の風景もあってとても開放的な気分でさせてくれる。
「まだランチには早い? でも『何か』の気分よね」
 ケイティが時間を確認しながら言う。
「飲み物とか、何か甘いものとか?」
 私も同調する。
 風景を眺めつつ辺りを探っていると、木陰に停まった大き目の白い車が視界に入った。
 アイスクリームバン。名前の通りの、おそらくイギリス限定の、キッチンカー。
 その窓に貼られたメニュー表に、二人とも足を止める。
「……いいじゃない?」