不思議なもので、あのリストを見ただけで私の好奇心はロンドンの娯楽を向いていた。だからこうして今日から早速、改めての二人一緒の観光を予定してる。
と言っても、想像しやすい観光地巡りではなく適度にローカル感のある都心部への散歩というつもりでいる。友達と一緒に行くのなら、それくらいの日常の味があったほうが楽しい。
電車を乗り継いでウォータールーで降り、巨大な円柱の建物を囲うように交差する大通りを渡っていくと、やがてテムズ川にのぞむ広い散歩道の姿が見えてくる。
ここまで来たら、あとは石造りの階段を下りていくだけ。
「ところで」
先を行くケイティが訊く。
「IMAXで映画は観た?」
「観た」
IMAXは、私たちがさっき通り過ぎた円柱の建物のことだ。20×26メートルというイギリス最大サイズのスクリーンを置く映画館で、あの時見た映像の迫力は酔いそうなくらいだった。
「じゃあ、BFIサウスバンクは?」
別の映画館の名前を出されて、考える。
「ない」
「あそこ、毎年映画祭やってるから、その時に行くと色々珍しい作品観れていいよ」
硬い階段に二人分の足音が響く。
「それっていつ開催なの?」
「毎年秋」
「え」