柔らかい太陽光、薄青の空、からっと爽やかな空気。ロンドンの夏は心地いい。
風と、ドアが閉まる音がした。
「OK、行くよ!」
隣で元気な声がして、私たちがこれから街に繰り出すことを宣言する。
「OK」
私ももう一度鞄を確認して、軽やかな足取りで先を行くケイティに続いた。
フラットの前の道を辿って大通りに出て、駅に向かう。
まだ太陽は低い朝の時間帯だけど、駅に近づいていくと、出掛けている人の意外な多さに気付く。
石畳の歩道を行く軽装の人々やいつもより明るく見える色合いの建物を眺めていると、さっき見たあの一瞬の風景を絵にしようと思う、画家のような気分になる。
「舞子、楽しい?」
急にそう尋ねてくる彼女に一瞬面食らう。
「まだフラットを出たばかりじゃない」
「これからもっと楽しくなるよ」
茶目っ気のある笑顔で言われ、私もつられて笑う。
ケイティと並んで歩くのも心地いい。彼女がアクティブな性格で、こっちを飽きさせないというのが大きいのだけど。
このお出掛けだって、決まったのは昨日だ。