タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜



「それよりもさ、あの話を聞かせておくれよ」
と加陽は囲炉裏の前に座り、伊代に尋ねる。

「この野分も雷が落ちたのも、全て神様のお告げで知っていた事なのかい?」
「あ、はい、まぁ・・・・そうですね」
「それはいつ知った事なんだい?ムラの人の話だと、早くから野分が来る事を大人達の前で唱えていたそうじゃないか。もしや、奴国に来る前からそのお告げを受けていたとか・・・・」
「いや、えっと・・・・まぁ、そんな感じですか、ね」
と伊代は半笑いだ。

「とんでもない事だね。そうなれば、伊代様達はこのクニをお救いくださる為に来てくださったって事だろう。初めてお会いした時は雑な扱いをしてしまったけれど、どうか許しておくれよ」
「いやいや、全然気にしてませんから。アハハ・・・・」

伊代は話を誤魔化すように、汁椀で顔を隠しながらきのこ汁を口に運ぶ。

「でも、どうしてだろう」
と綺那李がまた、考え込むような表情になる。
「雷が同時に二つ・・・・しかも一つは、王様だけを狙ったように直撃するなんて、とても不思議だ」
「木に落ちたことはあるよ」
と今度は、小麻李が話す。
「小さい時に見たことあるよ。畑の中に一本だけ生えていた木に雷が落ちて、真っ黒焦げになってたの」
「小さい時って、小麻李は今も小さいだろ」
小麻李は姉に舌を突き出す。

「木とか山に落ちたって話はよく聞くけど、人に直撃したってのは確かに聞かないね」
と加陽も同調する。
「やっぱり、紙の仕業なんだろうね。天罰だからだろう」

「きっと、広場だったからじゃないでしょうか」
と、伊代が話す。
「あの広場は周りに建物もなくて拓けた場所でした。その中で処刑台だけ少し小高くなってて、その上で王様は長い銅剣を掲げた瞬間、雷が落ちてきたので・・・・避雷針みたいに、雷が落ちやすい状況になってしまったんじゃないでしょうか」

避雷針とは、マンションやビルなど高層の建築物に設置されるもので、雷が人や物を直撃しないよう、そこへ落ちるように誘導して雷の強大なエネルギーを逃す装置だ。
現代日本ではほとんどの人が目にする馴染みある物だが、弥生時代の人々にそれがわかる訳がなく、話を聞いていたみんなが首を傾げている。

「えっと、つまりね、金属の細長い物を高く掲げると、雷がそこに誘導されやすいって事なの」
「へぇ・・・・そんな事があるんですか。物知りなんだなぁ、姫巫女様は」
「でも、でも、雷は主祭殿にも落ちたんだ。あそこには別に、金属の細長い物は無いんじゃない?なぜ同時に主祭殿も雷の被害を受けたんだろう?」
「それは・・・・たまたまだったんじゃないかな?自然現象だし」
と伊代ははぐらかす。

流石に伊代も、天気や理科的知識が高い訳では無い為、説明に戸惑う。
この時代の人々は、自然の摂理や人間の知識に及ばない現象が現れると、やはりどれも神や天罰としたがるようで、加陽はずっとそうだ、そうだと言い張っている。

一晩中このような女性達の雑談が繰り広げられ、その間に嵐は勢力を落とし、奴国を去っていった。