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家の柱が細かく揺れている。
屋根に敷き詰められたたくさんの茅も、強風の影響を受けてガタガタと音を立てている。
伊代は綺那李たち一家の竪穴住居に戻り、歌織や京平、太市の三人は牢獄へ再び戻った。
しかしこれは野分を凌ぐための一時的な措置で、牢獄の環境は整備され食料も分け与えられ、少しは快適に過ごせるよう手立てが施された。天候が落ち着き次第、囚人達は速やかに釈放される事になっている。
竪穴住居の内部は湿気が酷く、囲炉裏の火もつきにくい。食事の煮炊きにもいつもより手間がかかっている。
「野分が去った後に収穫祭が行われるだろうから、そうすればみんなで穫った米がたくさん食べられるわよ」
「楽しみ!みんなで腹一杯食べられるね!」
「そうよ。だから今は、もう少し辛抱しようね」
加陽は娘たちにそう言って、慎ましい食事に耐えるよう聞かせている。
小麻李はすぐに訪れるだろう、心も胃袋も満たされる未来を空想しながらじっと座っている。
日頃から活発的な少女である綺那李は、家の中で長時間過ごすことに慣れていない様子で、空腹を誤魔化すようにウロウロと歩き回っている。
二人の少女の姿を眺めていた伊代は、歳の離れた従兄弟の存在を重ね合わせ、クスリと微笑んだ。
「何がおかしい?」
と綺那李が尋ねる。
「いや、ごめんね。何だか綺那李ちゃんがウロウロしている姿を見て、うちの従兄弟を思い出したの。綺那李ちゃんと同じくらいか、少し年上くらいよ」
「伊代さん…いや、姫巫女様には従兄弟がおられるのか」
「 “姫巫女”って、私?どうしたの、突然…」
「貴女様は我がクニをお救い給うた巫女様で、葉李菜様すらも頭を垂れるのだから、当然のこと」
戸惑う伊代の前に、食事が出される。それも炊かれたばかりの白い米と、筍やきのこの入った贅沢な汁物だ。
この家でこれまで提供されていた質素な粟の粥とは雲泥の差である。

