タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




ムラへ戻ると、歌織は巫女の装束を脱いだ。
このムラへ来たばかりの時に借りた麻の着物に着替え、そして何かを準備すると言って少しの間姿を消した。
伊代も着替えようかと考えたが、巫女という設定だからこのままの装束の方が都合がいいだろうと歌織は言った。
そして歌織の準備が整うと、葉李菜(ハリナ)の後について王のいる主祭殿(しゅさいでん)へ向かった。

主祭殿は前回のように大人たちが集まり、政に関する議論をしている。
その中央の王座にその人の姿は無く、王の決定無しで話し合える物事を優先して行っているようだった。
"気まぐれ王" の呼び名にふさわしく、ここまで政を疎かにする愚鈍な王であるが、その王に対して姿勢を改めるように上申出来ない臣下も臣下である。

葉李菜は王座の横にある姫巫女の座敷に座り、伊代と歌織は昨日と同様、大広間の隅に控えてその時が来るまで待つ。
王座はいつまで経っても空席で、奥の自室に控えているはずの奴国王が現れる気配はない。
年老いたムラ長は王から全てを任されていると言って、我が物顔で議論を取り仕切っている。
議論中に出た話を取りまとめ臣下の意見として王に奏上するというが、取りまとめるどころか話の論点も突いていない。
老いによるボケだろうか。

一回り年若い男たちも、我こそはと自分の思惑に沿うように誘導しているようにしか見えない。
議題を投げた本人たちは身分が低いのか、流れに任せて何も発言しない。
問題が解消されない不安を抱えながらも、貼り付けた笑顔でただ頷くばかりだ。

これでは真っ当な政にはならないだろう、と仕組みをよく知らない歌織ですら思った。
葉李菜はというと、呆れ顔で議論の行方を見守っている。何度も王の自室を振り返り、動きがないか確認している。

「では・・・本日の論議はこれで全てかな」
年老いたムラ長が大人達に問いかける。
その言葉を合図に、大人達は立ち上がり大広間を足早に出ていこうとする。

「お待ちくだされ。あと一つございます」
と、葉李菜が声を上げる。
王の登場を待ちきれず、歌織たちに目配せをしてから、大人達を再度結集させた。

「本日朝の祈祷にて、神より啓示がございました。お告げを受けた伊代殿から、皆様にご説明申し上げまする」
伊代は大人達の前に進み出て、恐る恐るお告げの内容を話し始める。