タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




そうこうしている内に四人は、祭壇へ到着する。
少し遅れて葉李菜(ハリナ)と巫女の一行もやってきて、朝の祈祷の準備を始める。
東の空は明るみ、陽の一部が顔を出そうとしていた。

葉李菜は再び伊代と歌織を気にかけ、詮議が先延ばしになったことを謝罪した。
その謝罪に葉李菜の誠意は感じられたが、どうすることも出来ない無力感を抱いているようだ。
「友人達については申し訳ない。しかし新しい朝はやってくる。神々への感謝は忘れないように。祈祷に参加してくれて、嬉しい」

そう言って葉李菜は巫女の先頭に立ち、彼女らを率いて祈祷の儀式を始める。
歌織たち四人は最後尾に座り、巫女達に合わせて祈る。

「伊代、次の作戦を考えたの」
歌織は祈祷の最中、伊代に耳打ちする。

「伊代がさっき言ってた予知夢、それを使おう」
「どういう意味?」
「エセ宗教的なこと。ムラの人々の安全と引き換えに囚人を解放してもらう、そういう取引をするの。そうすれば、王様も重たい腰を上げてくれるでしょ」
「どういう取引なの?台風の被害をみんなに教える代わりにってこと?それって上手くいくのかな」
「上手くいくと思う。でもこの作戦は、伊代に頑張ってもらわないと難しいかも。さっき、運動神経弱いとか、無理だとか言ってごめんね」
「それは・・・わかってるから別にいいんだけど」
「結構無茶ぶりさせるかも。でも、伊代のこと信じてるからね」
伊代は歌織の考える作戦に不安を抱きながらも、そのまま全貌を聞き続けた。




一方、牢屋ではある異変が起こっていた。
朝になったにも関わらず、京平は床で横になったまま起き上がらない。顔色は青白く、脱力している。
太市が声をかけても、「大丈夫」と繰り返すばかりでその呂律も回っていない。

「頑固者が祟ったな。昨日の水を素直に飲んでりゃいいものを」
と、斜向かいの牢から見ていた囚人が言う。

囚人は元気よく喋り始めたが、その頬は痩せこけ、身体中が土まみれだった。
牢屋に閉じ込められている囚人たちは皆、まともな水や食事を与えられていない。
牢屋に入れられて長い者はそのことを知っているため、雨の日に器を用意して天井から落ちてくる雨水を貯めているらしい。

「その水ももう空になっちまった。ここ数日雨は降っていないし、数日に一度は食べ物が配られるがそれも王の気まぐれさ」
「前に食べ物が配られたのは、いつなんだ?」
と太市が尋ねる。
「四日ほど前かな。そろそろ次の飯が来てもおかしくねぇが、米の収穫前で食べ物が少ないからな、期待しない方がいい。もしそこでぶっ倒れてる奴が死んだら、その分の飯は取っとけよ」
「そんなこと言うなよ、冗談でも死んだら、なんて」
「綺麗事言ってられるのも今のうちだ。お前の隣の牢の奴だってもうわずかな命だろう。こんなことにはじきに慣れるさ。全ては王の気まぐれで釈放が許されるのを待つだけだ」
「あんたは、どうして牢屋に?」
「大層な罪があったら話の種になったけどな、生憎だがおまえたちと同じで大した罪はねぇよ」

そう言って囚人は牢屋の奥へ下がり、床に突っ伏した。
太市はまた、京平の様子を見る。
おそらく脱水症状だと太市は考えたが、どうすることもできない。
牢屋の外へ声をかけても兵士がやってくる様子はないし、他の牢屋の囚人から貯めている雨水を分けてもらおうにも、ほとんどが瀕死の状態である。

太市はどうしようもなく、ただ京平に寄り添うことしかできない。
また歌織が水と食料を持ってきてくれたら、と願うばかりだった。