タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




阿湯太那(アユタナ)は、ムラの東に位置する自宅に到着した。
弥生の人々の住居は、後に竪穴(たてあな)式と呼ばれる構造の建物に住んでいる。
竪穴式とは、地面を掘り下げて地中に住居を造り、上から(あし)等で屋根を葺いた建物を指す。
地上から見ると、寄棟(よせむね)のような形の屋根だけがあるように見える。
住居の形はこの他にも、柱の上に床を構える高床式などの建物もある。
また、竪穴式の建物は住居に限らず、貯蔵庫や蚕の飼育場等の建物としても利用されている。

「本物の、竪穴住居・・・・」
伊代は先ほどの苛立ちを忘れ、目を輝かせながら住居の外観を見回す。
「教科書に載ってるやつ、まんまじゃん」
「現代では遺跡の中に復元されたものしかなかったから、本物を見れてすごく嬉しい!本当にこの形をしてたなんて」

伊代は興奮し、目の前の高さにある葦の屋根をまじまじと観察する。
長年使い込まれている葦は傷みが見られ、茎の合間からダンゴムシのような小さな虫がわいている。
近づくと、(いぶ)されたような独特の匂いを発している。
多数の虫と匂いにより、伊代の好奇心は瞬く間に薄まり、冷静さを取り戻した。

「伊代、どうしたの?」
「ちょっと・・・もう、いいかな」
「うわ、虫凄いね。それで嫌になったの?」
と、歌織は揶揄う。伊代の視線は遠くにあり、屋根を直接見ることを避けている。

加陽(カヤ)
阿湯太那は小さな入り口を覗き、中にいる女性に声をかける。
「あなた、お早いお帰りで」
「いや、すぐに戻る。世話を頼みたい者がいるんだ。この女子二人に、飯を用意してやって欲しい」

阿湯太那の呼びかけに応じ、狭い入り口から小柄な女性が出てきた。
"加陽”と呼ばれたその女性は、歌織と伊代を見るなり目を丸くした。
二人の服装、髪型を見て、先ほどまでの大人達と同じような反応をした。

「あなた。この娘達は、クニの者ではないですね?」
「訳あってな。世話を頼めるか」
「まさか、あなた。どこぞの女子の・・・・」
「戯け。姫巫女の客人だ、家に迷惑はかけぬ」
「そうですよね。堅実なあなた様が、ねぇ。信じていますよ。あなたも食べて行かれますか」
「頼む。朝から出突っ張りだったからな」

阿湯太那はさっさと家の中へ入っていく。
加陽は、歌織たちを物珍しそうに見つめ、「入りな」とだけ話しかけて中に入った。
自分たちがあまり歓迎されていないという事は、歌織と伊代にはすぐにわかった。