タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




「いつまでここに閉じ込められるのか、尋ねていたんです」
と、京平が声をかける。
「その子はあなたの言いつけ通り、何も話しませんでした。俺たちはいつまで捕まったままなのでしょうか」
「罪人が軽々しく話してはならん」
「俺たちは罪を犯していません。不法侵入しようと思った訳ではなくて、道に迷ったので助けを求めていたんです」

大柄な男は、そこでようやく京平たちに目を向けた。
睨みを効かせながら、二人をよくよく観察する。まるで獲物を見定めているかのようだ。

「なるほどな。確かに意味のわからん言葉を話すようだ」
「えっと・・・・あ、"不法侵入”ですか?"不法侵入”っていうのは、無断で」
「今のは話しかけたのではない。罪人が勝手に声を出してはならん。着ている物も、頭もおかしな奴らだ、異国からやってきた渡来人だろう。取り調べは追って行うから、綺那李(キナリ)は家に帰りなさい」
綺那李と呼ばれた少女は何か言いたげに、京平たちを見つめる。

そこへ、別の男が駆け寄ってきた。
阿湯太那(アユタナ)様!」
と、大柄な男を呼ぶ。

「どうしたか」
村長(むらおさ)が、急ぎ来るようにと仰せです」
「村長が?何か聞いているか」
「姫巫女が朝の祈祷からお戻りになったのですが、何やら渡来人が一緒におりまして」
「渡来人?」
「おかしな身なりをした、女二人です。言葉は通じるのですが、何やら意味のわからないことを申しております」

会話に耳を傾けていた京平と太市は、顔を見合わせる。
自分たちと同じくおかしな身なりをした、女二人。
恐らく、歌織と伊代のことかもしれない。二人の表情が明るくなる。

「おじさん!女の子のお父さん!俺たちにも会わせてくれよ」
と、太市は必死にアピールする。
「俺たちと同じ人間かもしれないから。言葉がわからなかったらさ、通訳でもするから。お願いします!」

「罪人の掟が全く通じぬようだ」
と、大柄な男は太市たちに背を向けたままだ。
「父様、ここは私が見張っておきますから、村長のところへ行ってください」
と、少女は無理やりにでも牢屋に残ろうとする。
「可愛い気のない娘だ。綺那李は早く家に戻って母様を手伝え」
大柄な男は片腕でヒョイと少女を持ち上げ、嫌がる声に耳を貸さず、牢屋から去って行った。

牢屋には再び、静寂と暗闇が訪れた。
「歌織と伊代、無事だといいな」
と、太市が呟く。

「下手なことはしない方がいい」
と、京平は忠告する。「癇癪(かんしゃく)を起こされて、突然首を跳ねられたら終わりだからな。慎重に交渉しないと」
「う、ごめん。つい・・・・」
「まぁ、あの綺那李って女の子は、利用し甲斐があるかもな」
京平は地面に横になる。希望が見えたのか、安心して眠気が襲ってきたようだ。
「え、京平、寝るの?」
「何かあったら、起こして」
と、京平は目を閉じた。