タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜







女子二人が心配をしている頃、不安の種である男子二人組は、木造の檻の中にいた。
彼女たちが向かっている奴国(ナコク)の中心に位置する王達の住まい、そこは謂わば、政治の中心地となるムラである。
ムラを囲う砦の周りで、格好のおかしな男二人組が不審な動きをしていた、と砦の監視役に捕えられてしまった。
見張り役から、そのまま檻の中で一晩を明かし呼び出しを待つように、と指示された。

「いや、寝れるわけなくね?」
と、太市はあくびを殺して呟いた。
この世界に来てから食事をしていないし、檻の床は無く砂の地面に寝そべることは難しい。
横になったとしても土や石でゴツゴツとしており、安眠にはほど遠い。
かつこの辺りの土壌の影響か、身体中が砂を浴びたようにザラザラとして不快だった。

太市は横になりつつも一晩中寝返りを打ち続け、京平は横にすらなっていなかった。

「俺ら、マジで罪人扱いじゃん。せめて飯食わせてくれよ」
「罪人に与えられる物なんて無いだろ。これは現代で言ったら、拘留期間みたいなもんだろ。どんな判決が下されるか、待ってるんだ」
「冷静だな、京平。俺たち、最悪の場合さ・・・処刑されるとか、ある?」
と、太市は体を震わせる。

「この時代に法律があるか、わからないしな。俺たちは外から来た侵入者だし・・・あるかもな」
「いや、ヤバいって。どうにかしないと」
「落ち着けって。はじまりの城で、あのおっさん言ってたじゃん」
「おっさん?」
「侍のおっさん、忘れたの?この世界で死ぬことは、"永遠の死"だって言ってたろ。もしここで処刑されたとするなら、俺たちは永遠に死ぬってことだ」
「どういう意味?そりゃ、死んだらお終いだよな」
「永遠じゃない死、があるってことなんだろ」
太市は目を見開く。京平の頭の回転の速さに、驚かされる。

「永遠じゃない死・・・・死んでも生き返る、とか?」
「試してみたいな」
「え、やめろよ、京平。自分から死ぬようなことがあったら」
「冗談だよ。とにかくこの世界で死ぬことはないようにするよ」
「本当に、怖いよ。京平は突拍子もないことやりそうで」
「太市も気をつけろよ、うっかり死ぬなよ」
「誰がうっかりで死ぬんだよ、そんなアホみたいなことあるか」
「あり得るだろ。ここは恐らく、大昔の日本。法律が無ければ殺人はどこでも起こり得るし、最先端の医療が無ければどんな小さな傷も致命傷になり得る。特に太市はお人好しだから、誰かを庇ってとか、そういうの簡単にしそうだし」
「京平・・・・」
と、太市は瞳を湿らせる。

「え、ヤバ。おまえ、泣いてんの?」
「ヤバいな。慣れない地で、感情が昂ってんのかも」
「今のに感動ポイントなんてあった?」
と、京平が面白がって太市の肩を叩く。
「いや、だって・・・・前の京平に戻ったみたいで、すごく安心した」

太市はさほど涙もろい性格ではない。少なくとも、学生時代の太市はそうだった。
いつも笑顔を絶やさず、その元気で全て乗り切って来たような男だった。
それ故に、他人の笑顔以外の表情を見ることに敏感になり、自分が相手を笑顔にしなければ、という観念に囚われるようになっていた。これこそ太市が "お人好し"と言われる所以である。

学生時代はこの性格で乗り切っていたが、社会に出ると上手くいくはずもない。
様々な年齢層、育ちの違う人々と交わる中で、常に相手の利益を考えることに疲れていた。
太市が話した "ここ最近で一番安心した”という "最近”とは、大学を卒業してからの一年あまりを指していた。
しかしその事を、今の京平は知る由もない。