タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




小麻李(コマリ)は思いの外真顔だったため、伊代は少し寂しさを感じた。
「それって、誰に言われたの?」
「小麻李のお母さん。どちらかになって、クニの為に尽くすんだって。じゃないと」
「じゃないと、何だって?」
「じゃないと、クニを追い出されちゃう」
深刻な小麻李の表情に、伊代と歌織は顔を見合わせる。

こうしている間に朝の祭祀は終わり、葉李菜(ハリナ)と巫女たちは祭壇から降りてきた。
「客人方、お名前をちゃんと伺っていなかったように思う」
「あ、私は歌織です。それと、伊代です」
「歌織殿、伊代殿」
と、葉李菜は温かい眼差しで二人をよく見つめる。

「こうしてお会いしたのも何かの縁。良ければ、我らのムラに参られよ」
「え、いいんですか?」
「地の理に詳しい者に尋ねれば、帰り道もわかるかもしれない。何より、先ほどから腹の虫が大きく鳴っていて、気になって仕方がなかった」
と、葉李菜はクスクスと笑う。

歌織と伊代は赤面しながらも、姫巫女の心遣いに感謝し、巫女の列に入ることにした。
他の巫女たちからは相変わらず白い目で見られているが、小麻李は警戒することなく、二人と近い距離で接していた。

「実は、私たち二人だけではないんです」
「と言うと?」
「あと二人、男子と一緒にやってきました。この辺りを探索するって出て行ったきり、昨日から会えてなくて」
「ならば、それも我らのムラの者に尋ねてみよう。この辺りは全て奴国の地であるから、姿を見ている者がいるかもしれない」
「ありがとうございます」

葉李菜は奴国の王女でありながら、とても気さくな印象を受けた。
年齢は歌織たちとあまり違わないように見えるが、貫禄があり芯が強い。
他の巫女たちも皆若いようだが、見た目は一回りも上なように思えた。
幼い小麻李ですらも、年齢に見合わずしっかりしている。

「多分だけど、この時代の人たちって私たちの時代よりも寿命が短いでしょ。その分大人として認められるのが早いんじゃないかな」
「ふーん、なるほどね」
「弥生時代はわからないけど、平安時代以降とかなら、女性は十四歳で裳着(もぎ)、つまり成人したことになってる」
「えぇ、早っ」
歌織と伊代は、巫女の列の最後尾を歩きながら、小さな声で話し合った。