タイムトリッパーズ〜いつの時代も必ず君に逢いにいく〜 第一章 YAYOI〜日出づる國の女王〜




巫女達が行うのは、毎朝日が昇る時刻に行う習慣の祭祀だ。
その日一日の平穏を祈り、またこの時期は稲の収穫が行われる為、豊穣への感謝を捧げる。

祭壇と呼ばれるのは小高い丘であるが、その上に木で組んだ低い神棚が置かれ、収穫した稲や、米から作った酒を供える。
十数人の巫女たちが見守る中で、姫巫女は神棚の前に膝をつき、小笹を振って祈りを捧げる。
朝日に照らされた姫巫女は輝きを増し、その真剣な祈りに伊代達は目が離せない。

「あの葉李菜(ハリナ)様って人は、すごい人みたいだね」
と、歌織が呟く。
「なんか、貫禄が違うよね。美人だし、女性のリーダーって感じ」
「りーだーって何?」
と、隣にいた小麻李(コマリ)が歌織達の話に耳を傾けている。

「えっと、リーダーは、すごく偉い人、みたいな感じ」
と、語彙力の無い歌織なりに説明する。小麻李は首を傾げる。
「すごく偉いのは、王様だよ」
「この国の王様って、葉李菜様のお兄さん?」
「王様と葉李菜様が、力を合わせて奴国(なこく)を治めてるの」

この弥生時代に限らず、男女二人での統治体制はいつの時代にも見られる。
男女とは血縁関係のある兄弟姉妹の場合が多く、その他は夫婦での統治もある。理由としては、国の権力が一人に集中することを防ぐ為であり、または女性統治者を男性が補佐するという名目もある。

弥生時代では特に、政治において神道は中心にあり、巫女との関係性はとても重要なものだった。それにより女性の巫女を中心に立てて、神の声をもとに親族の男性が政治を行う。全てのクニがこのような体制だったという証拠はないが、奴国ではこの政治体制を先祖代々維持してきた。

伊代はいつの間にか、体を小刻みに揺らしていた。
「伊代、どうしたの?寒い?」
「ううん。なんだか、ウズウズしてきた。知りたいことがたくさんあって」
「さすが将来の歴史学者さんは違うなぁ」
「れきしが、く、しゃ?」
と、小麻李はさらに首を傾げる。

「このお姉さんの、将来の夢だよ」
と、歌織は説明する。

「夢って?」
「将来なりたいってこと」
「巫女様と一緒?」
「いや、巫女様じゃなくて、何て言ったらいいかな・・・」
「女の人は、巫女様になるか、子供を産んでムラを支えるか、どちらかしかないって言ってたよ」