女子二人組と別れた後、偵察隊の男子二人は長々と続く田んぼ道を歩いていた。
場所を示す看板や地元民を見つけられればと探索するものの、現在まで稲と山しか見ていない。それだけでなく、普通であればあって可笑しくない電線やガードレール、電灯すら見当たらない。道も舗装されておらず、歩くたびに砂が舞いスニーカーを汚す。
「そういえば、俺たちスニーカー履いてるな」
と、太市がぽつりと言う。
「え?」
「もともと京平の部屋にいたじゃん。玄関で靴を脱いでるはずで、それから履いた記憶がない」
「そうだな」
京平はそれだけ言って、また黙々と歩き続ける。
学生時代は会話の絶えなかった二人であるが、再会してからというもの、京平は口数が減っている。
太市は少し寂しさを感じつつ、更なる話題を模索する。
「どんだけ田舎でもさ、電線くらいはあるよな、普通。人も見当たらないし、なんか変だよな。てか、さっきからずっと同じ風景だし、道覚えられなくね?もとの場所に戻れるかな」
京平は特に返事をせず、太市の独り言に終わる。
ふと、何かに気づいた京平は足を止めた。
「ん、どうした?」
「あれ」
京平の見る先には、遠くに細々と煙が上がっている。一本かと思いきや、どうやら複数の煙がまとまって上がっているようだ。
「え、火事?」
と、怯える太市。
「いや、あの下に集落があるかもしれない」
「人がいるかもしれないってことか?行ってみよう」
二人は歩くスピードを早め、煙を頼りに村人を探す。しかし歩いているうちに、京平が訝しむ。
「あんなにたくさん火を焚くことって、普通あるのか」
「野焼きでもしてるんじゃね?」
「それにしても、煙の出所はまとまってる。てっきり炊事の煙かと思ったけど、もしそうならガスや電気で料理をしてないことになる」
京平の胸騒ぎは、さらに大きな驚きとなって現れる。
辿り着いた二人が目にしたものは、コンクリートのビルや木造住宅ではない。太い丸太によって建てられた柵、謂わば砦だった。
煙の出所は、その砦の敷地内から出ている様子だった。