うらら「なんで…なんでよりによって澤田が上野さんを助けるのよ…!!」
あんなの、見たくなかった。
初恋の人が、自分以外の女子を抱きしめるなんて…
真鈴「…澤田くんが上野さんの隣にいたんだもん。そりゃ、澤田くんが助けるよ…」
彩良「正直言って…自業自得じゃない?何も悪くない上野さんに嫌がらせしたし…」
うらら「最悪…最悪…!!」
真鈴と彩良は元から反対気味だったから、そう言われても仕方ない。けど…
唯一の親友二人に責められるのは、さすがに辛かった。
彩良「…これで、もう嫌がらせはしない?うらら?」
うらら「っ…」
真鈴「これ以上上野さんに何かしたら、澤田くんにバレるかもよ…?」
うらら「……」
彩良「…まだ、諦めてないの?」
うらら「…分かったわよ。でも、最後に一つだけ…」
彩良「何?」
うらら「…秘密。でも、嫌がらせじゃないわよ。」
彩良「…なら、いいよ。」

ー翌日ー
通学路
うらら(あ、いた…)
前の方で、上野さんと澤田が並んで歩いてる。
澤田の顔は…少し笑っていた。
あたしには一度も見せてくれなかった、楽しそうな表情。
上野さんと過ごせるのが、よっぽど嬉しいんだろう。
上野さんを傷つければ、きっと澤田も傷つく。
…あたしは最近ずっと、好きな人の幸せを奪おうとしてたんだ。
…最低だ、あたし。
好きな人の幸せが自分といることじゃないからって、自分勝手なことしてた。
…もう、二人の幸せを奪おうとは思わない。
ただ最後に、聞きたい。
うらら「…う、上野さん!」
クルッ
里愛「あ!西音寺さんだっけ?どうしたの?」
…本当に不本意だけど、改めてちゃんと見ると、上野さんの顔、すごく綺麗で可愛い…
海都「…何しに来た。」
うらら「えっと…話したいことがあるの。ちょっとだけ、校舎裏に来てくれない?」
里愛「いいよ!海都、先に行ってて!」
海都「…分かった。」

ー校舎裏ー
里愛「それで、西音寺さん、話って?」
うらら「…あの、上野さんて、なんで澤田と仲良いの?」
里愛「え?んー…実は私、幼稚園の時いじめられてたの。」
うらら「え…」
里愛「その子は、私が男子に注目されてるのが気に入らなかったみたいで…」
うらら「…そうなんだ…」
なにそれ。あたしが上野さんに嫌がらせしてた理由とほぼ同じじゃん…
里愛「私の当時の友達が、海都に相談してくれたみたいで、それで仲良くなったの。」
うらら「…つまり、澤田に助けられたのね。」
里愛「うん。最初は冷たかったけど、だんだんと心を開いてくれて…」
うらら「……」
…あたし、男子に人気じゃなくなってから、澤田と話さなくなってから、辛くて、「上野さんのせいだ」って八つ当たりみたいなことしてたけど…
むしろ、辛かったのは上野さんの方なんだ…
幼稚園の時からなんて、相当心が傷ついてるはずだけど、澤田が一緒にいてくれたから耐えられたってことかな…
里愛「…まさか、転校先でも酷いことされるなんて、思わなかったけどね…」
そう言って上野さんは、苦笑いした。
里愛「いつの間にか変な噂流されてたり、階段から突き落とされそうになったり…やった子は、幼稚園の時の子と同じような理由なのかな…」
うらら「……」
…このまま何も知らないフリして「大変だったね」とか言ったら、責任逃れになっちゃう。そうなるくらいなら、正直に言った方がいいわよね…
うらら「…上野さん!」
里愛「何?」
うらら「…ごめんなさい!!それ全部、あたしがやったの…!!」
里愛「えっ…?」
うらら「上野さんが辛い思いしてるって知らなくて、自分勝手なことしてた…!!本当にごめんなさい…!!」
里愛「…いいよ。慣れてるから。」
うらら「慣れてるって…」
里愛「まぁ、普通は慣れるもんじゃないけどね」
そう言って上野さんは、いたずらっぽく笑った。
里愛「…西音寺さんてもしかして、海都のこと好きなの?」
うらら「え…!?」
まさかの質問に、言葉が詰まった。
里愛「海都って冷たいけど、そこがなんか人気みたいなんだよね。…たまに、凄く大胆なことするけど。」
うらら(…澤田が大胆なことするのは、きっと上野さんにだけだと思うわよ)
里愛「まぁ、私も分からなくはないよ。普段は冷たいけど、たまに見せる笑顔とか行動とかがギャップだったりするから…」
そう言って上野さんは、照れ臭そうにしてる。
うらら(…もしかして上野さんも…)
里愛「…話って、もう終わり?」
うらら「あ、ちょっと待って!最後に一つ、言いたいことがあって…」
里愛「いいよ。何?」
うらら「…あたし、上野さんの方が澤田と仲いいのは認める。でも、澤田のことは諦めない。これからも上野さんと仲良くするつもりもない。」

言い切ってから、少しの沈黙が流れた。

里愛「…分かった。」
うらら「ありがとう…。引き止めちゃってごめんね。」
里愛「うん。じゃあ、また教室でね。」