真鈴「復讐って…?」
うらら「だって、上野さんがいなければ、あたしたち3人の誰かが選ばれてたかもしれないじゃない?」
彩良(…いや、でも、澤田くんはうららは好きじゃないってハッキリ言ってたし、上野さんがいなかったとしてもうららが選ばれないのは変わらないと思うけど…)
真鈴「そうかな…」
うらら「そうよ!」
彩良「そりゃ、私だって選ばれなかったのは悔しいけど…だからって復讐は必要?」
うらら「…二人が乗り気じゃないなら、あたしがやるから、二人は見てるだけでいいわよ。」
彩良「…あとから澤田くんに嫌われても知らないよ?」
うらら「大丈夫。上手くやるから。」

ー翌日ー

朝休み
彩良「本当にやる気?」
うらら「もちろん!ただ、ありがちな嫌がらせじゃつまらないから、どうせならクラスを巻き込んでみるとか?」
彩良「速攻で先生にバレそう」
うらら「上野さんは来たばかりだから、クラスの皆は来たばかりの上野さんより、クラスに馴染んでるあたしたちを信用すると思うの。だから、上野さんの悪い噂を流す!」
彩良「…それなら、バレないかもね。」
真鈴(…上野さんに嫌がらせするってことは、澤田くんを敵に回すってこと…。初恋じゃなくてファンだったとは言え、敵に回すのは嫌だな…)
うらら「流す噂はあたしが考える。これでいい?」
彩良「…いいよ。」
真鈴「うん。」
うらら「よし!」
上野さんに復讐したい理由は、澤田をとられたからってだけじゃない。
あたしは、上野さんが転校してくるまでは、男子に人気のモテ女子だった。澤田から避けられても、他の男子たちが励ましてくれてた。
…でも、今となっては、男子に人気なのは上野さん。上野さんは、認めたくないけど美人な上、性格も良いって言われて、転校初日から男子たちを虜にしていた。
男子に人気なあたしの立場を奪った上、あたしの初恋の澤田を独り占めしている上野さんを、絶対に許さない。

キーンコーンカーンコーン

ー休み時間ー

まず、最初に噂を聞かせるのは、女子。女子って、恐ろしい早さで噂が広まるから、使えるはず。
やみくもに話していくんじゃなくて、上野さんに話しかけてた女子から、順番に。
上野さんに話しかけてた女子は、二人。フレンドリーな五十嵐美琴《いがらしみこと》と、控えめな松川風楽《まつかわふうら》

うらら「ねぇ!五十嵐さんと松川さん!」
美琴「うららちゃん!どうしたの?」
風楽「…ど、どうしたの…?」
うらら「二人さ、昨日上野さんに話しかけてたけど、やめた方がいいわよ。」
美琴「え?なんで?」
うらら「上野さんて、前の学校でいじめをして、学級問題になったから転校して来たんだって。だから、何も考えずに話しかけたら、標的にされちゃうかもよ。」
美琴「そうなの!?」
うらら「うん。澤田が言ってた。」
美琴「そうなんだ…そんな子じゃなさそうだったけど、裏表があるのかな…。うららちゃん、教えてくれてありがとうね!」
うらら「念の為、他の子にも言っておいて。」
美琴「そうする!」
風楽「……本当かな…」ボソッ
美琴「ふう?」
風楽「…あ、なんでもない!」
美琴「?そっか」
うらら(…松川さん、あたしを疑ってる?)
大人しそうに見えて、実は鋭いとか?…まあいいわ。
うらら「じゃあね。」
美琴「うん!」

そして、あたしは真鈴と彩良のとこに戻った。
彩良「うまくいった?」
うらら「うん。二人共信じてくれたわ!松川さんは少し疑い気味みたいだったけど。まあ、1人に怪しまれるくらいどうにでもなるわ。」
真鈴「これで、上野さんが皆から嫌われるように仕向けるの?」
うらら「そうよ」
彩良「次はどうするの?」
うらら「そうね…次は移動教室だから、上野さんが階段を下りる時に突き落としちゃう?」
真鈴「え…それはやりすぎじゃない?」
うらら「復讐ならこれぐらいやらないと!」
彩良「…分かった。」

ー里愛視点ー
転校してきてからは、海都と一緒に行動するようになった。海都が色々丁寧に教えてくれるから、凄く助かってる。
…ただ、海都と一緒に行動してる時に、冷たい視線を感じるようになった。多分…睨まれてるのは私。私が海都と行動してることが、気に入らない人がいるのかも…
次は移動教室。…階段を下りる時に、誰かに何かされないか心配…。でも、海都がいるから、きっと、大丈夫。

そして、階段を下りる。…その時。

ドンっ

誰かに、背中を押された。

里愛「キャッ!」

バランスを崩して、思わず目を瞑った。このままじゃ、階段から落ちちゃう…!!

海都「里愛!!」

バンッ

海都が叫ぶのと同時に、誰かにぶつかる音がした。

里愛「…っ」

ドクン…ドクン…ドクン…

心臓が激しく鳴ってる。…どうやら、落ちてはないみたい。誰かが助けてくれた…?

パチ…

恐る恐る目を開けると、制服らしきものが見えた。

ホッ…

里愛(良かった…助かった。)

その時。

海都「…里愛、大丈夫か?」
すぐ近くから、海都の声が聞こえた。
里愛(海都が助けてくれた…?)

すると。

???「…チッ」

誰かの舌打ちが聞こえた。背中を押した人かな…

海都「里愛?」
海都が、心配そうに言った。
里愛「…大丈夫。」
背中に、海都の腕がまわってるような気がする。
里愛(…え?ってことは…)
…私、海都に抱きしめられてる…!?

ドキン…ドキン…ドキン…

心臓の鼓動が、変わった気がした。

海都「放すぞ」
里愛「う、ん…」
海都の腕の温もりが、まだ残ってる。
海都「…里愛?大丈夫か?顔赤いぞ。」
そう言って海都が、顔を覗き込んできた。
綺麗な顔が、心配そうな表情をしてる。

ドキッ

里愛「っ…だ、大丈夫!」
海都「そうか。念の為、保健室行くか?」
里愛「大袈裟だよ!大丈夫だってば!」
海都「なら良かった。…でも、今からじゃ授業、間に合わなさそうだな。」
里愛「教室戻る?」
海都「そうしよう。先生には、事情を説明する。」
里愛「うん…」

…それにしても、こんな気持ち、初めてだな…
ドキドキしたのは、緊張したから?それとも、海都が助けてくれたから?
…多分、どっちも。

そうして、私と海都は教室に戻った。