長かった……ようやく、ここまで辿り着けた。
 思えば、当ての無い旅だったわ。
 しかし今の私は、この世界の半分を貰ったようなもの……。

 瞼を開けば、そこには大きな赤い絨毯が下の階段まで続いている。
 私の左隣りには、カデル王子が立っている。いや、元王子か。
 右側には兄のアランが目を光らせている。

 ”女王である私”を守っているからだ。
 玉座の上に腰をかけ、足を組んでみせる。

 前国王である、”ヒューイ”から頂いた黄金の冠を人差し指を使い、クルクルと回して見せる。

「ようやく、この国も健全になったわね」

 私が口角を上げて見せると、カデルが眼鏡をかけ直す。

「残念ながら我が父、ヒューイには、人望が無かっただけです」
「そう言うな、カデルよ。彼も今じゃ私の大事な読者だ」

 
 一週間前、第一王子のアランを百合の同人誌で、沼へ落とすことに成功した。
 それからの出来事は、スムーズに進んでいった。
 まずアラン王子の魔法”カラー”を使い、私の描いた原稿に全て色をつけてもらった。

 これにより、全編カラーの同人誌を作成することが出来た。
 あとは、弟のカデルの魔法、コピーで大量複製。
 正に有能な兄弟と言えるわ。

 それを国中の男性にバラまくことで、大量の読者を獲得した。
 噂が広まり、国王のヒューイも読みたいと言い始め。
 読み終えたころには、感動したヒューイが作者である私に、王位を譲ると言い出した。

 息子たちのアラン王子やカデル王子も、王位継承権を自ら放棄した。
 神聖なる魔法の国、マジーナ。
 今ではこう呼ばれるようになった、百合大国ユリーナと。

  ※

 だが、ここまでは男性陣にしかメリットがない。
 これでは、いつか女性たちの不満が爆発するわね……そう思っていたころ。
 それは起きた。

 百合大国ユリーナへに対するデモ、いや暴動と表現した方がいいかもしれないわ。
 それだけ民衆の、いや女性たちの反感を買ってしまったのよ。
 
 若い兵士が慌てて、玉座の前に膝をつき、私に頭を下げる。

「女王陛下! ご報告いたします。暴徒と化した民衆、いえ女性たちが宮殿にまで押し寄せて来ましたっ!」
「ほう……」

 その報告を聞いても、私は至って冷静だ。
 だって、ここまでは私のシナリオ通りだもの。
 私の姿を見てアランが、顔を真っ赤にして怒鳴り始めた。

「陛下っ! 話が聞こえなかったのですか!? 今、あなたが民衆に捕まえられたら、命の補償はありませんよ?」
「フッ……」

 つい先週まで、私を処刑させようとしたアランが、命の心配か。

「案ずるな、アランよ。それより、カデル。民草たちをここへ」
「はっ、イエス・ユア・マジェスティ」

 カデルはちょっと、アニメの見過ぎかしら。