「俊」
「あ。春海」
「ごめん、待たせた」
駆け寄ってくる春海を、笑顔で振り返った。
「平気。絵、見てたから」
「ん。そっか」
二人で、壁に掛けられた絵を見上げる。
「すごいよねー……春海の絵、二枚も学校に飾られててさ。二年連続で受賞なんて難しいと思ったのに」
「二年目で最優秀賞取れたのは、もう、モデルへの愛情が半端ないからだと思うけど」
「うわ……恥ずかしいね、春海」
「……うん。自分でも、ちょっと今思った」
見つめ合って、笑ってしまう。
「行こ。何か買って、食べてから勉強だろ?」
「うん。そうそう。何食べよ~」
「はいはい、いいよ、いっぱい食べて」
「やったー」
「眠くなって寝るなよ?」
「ん! 寝ないし!」
「寝たら悪戯するよ?」
「……っ……だから、恥ずかしいでしょ」
「こっちは別に恥ずかしくないかな……」
「……恥ずかしいってば……」
二人でクスクス笑い合う。
……いつかきっと、誰かをすごく好きって思えて、恋ができるはず。
ずっと、そんな風に、思っていた。
「春海」
「ん?」
「……大好き」
そう言ったら、春海はすごく嬉しそうに顔を綻ばせる。
オレも、と言う春海と見つめ合って微笑むと、並んで歩き出した。
今、オレは、恋を している。
終