なんか、学活長い。先生の話が長いー。今日は九条の絵のモデルになる約束の日なのに。
「じゃあ、これで決まり、な」
やっと終わりかと思って立ち上がろうとした瞬間。
「あ、待て待て、綾瀬、もう一つあった」
マジで、長いー。 声には出さず、仕方なく座り直すと、担任が話し始めた。
「十月末にある体育祭、応援団があるだろ? 例年通り、団長は二年生から選ぶから、二年の各クラス、二名ずつ出すことになってる。全校が四色に分かれて、色対抗の競争だ。って、もう去年もやったから分かっているとは思うが……」
まあ、そういえばそんなだったような……もう一年前だからなあ。周りの皆も同じような感じで、なんとなく、うんうん頷いている。
三年も参加はするが、受験があるからメインではない。二年が団長で、全学年を引っ張ることになっているのは覚えてる。
「……応援団の団長副団長の候補、二名。誰か、立候補するやつ、いないか」
応援団かあ。そんなのもあったっけ。ふーん……。面白そう。
早く決めてしまいたかったのもあって、オレは、手をあげながら立ち上がった。
「先生、オレ、やる! 面白そう!」
「おお、さすが綾瀬! あと一人だな」
先生の言葉に、すぐ立候補が出るかと思えば、なかなか出てこない。
「誰か立候補しろよ! さっさと決めよ」
「俊、絶対忘れてんだろ。団長たちって……仮装もあるんだぞ」
「え? ……ああ、そういえば……」
「去年の青団なんか女装だぞ。悪夢だろ! 別のとこは、アニメの悪役だったし」
「良い仮装はしてねーよな……」
絶対嫌だという男子たち。
「もー、いいじゃん、仮装くらい。めったにできないし、面白いのやろうよー!」
「お前、ほんとそういうの、平気だよな、もー俊は黙ってろー」
「そうだそうだ、もうこうなったら、じゃんけんだー」
その声に、オレは「反対」と声をあげた。
「ほんとに苦手な奴にあたったらどーすんだよ。てか、できそうな奴らで、じゃんけんしろよ」
「もー、綾瀬は黙ってろよー」
オレと、男子の言い合いに、女子たちは楽しそうに笑ってる。男子の「できそうな奴ら」は自覚があるのか、断固拒否の顔。
「綾瀬くんが指名しちゃえば?」
女子の一人の声。
「え、オレが指名? いいの?」
「ふざけんな、俊、オレは選ぶなよー」
「無理無理無理」
「もー、お前ら…… いいじゃんか、絶対楽しいって。指名してもいいけど、立候補で気持ちよくやろーよ」
オレの言葉に、男子全員、二、三秒沈黙。
「はー。…… オレ、やる!」
ものすごく嫌そうではあったが、覚悟を決めたのか、佐原大介が手をあげた。
「おお、佐原、いいぞ!」
皆の拍手の中、先生がそう言った。
「大介、がんばろうなー?」
オレが言うと「はいはい」と大介が笑う。
「俊がやらねーなら、絶対やってねーけど」
「え、マジで? オレがやったからやってくれんの?」
「だって絶対楽しくなりそーだから」
そんな大介の言葉に、オレは嬉しくなって「がんばろ!」と笑った。
「よし、決まり! 綾瀬と佐原に拍手!」
おー、と、拍手が巻き起こり。やっとのことで、学活終了。
「綾瀬、佐原。明日の学活で色分けして、そしたら近々、招集かかるからな?」
「了解です! じゃオレ、行きまーす」
先生に答えてすぐに、鞄を持って立ち上がる。
「大介よろしくな、じゃあね!」
言いながら、クラスのドアを一番に開け、美術室方面に走り出そうとした瞬間。
目の前に、なんだか面白そうに笑ってる、九条が立ってた。