その日から、綾瀬は目に見えておかしくなった。見かける時もぼーっとしていて、オレと図書室にいても静か。明らかにおかしいのに、聞いても何でもないと言う。
今、美術室のいつもの場所からサッカー部が見えているけど、今日はさらに元気がないように見えて、思わず眉を顰めてしまう。
誰なんだよ、清田孝紀。
久しぶりに会うっぽかった。サッカーは続けてるって言ってたってことは……クラブチーム? 綾瀬ってそういえば普通にサッカー部だよな。クラブチームって、プロになるための養成所みたいなとこだよな? やめたってこと? そこの奴、かな。
綾瀬のキラキラ感を、電話一本であんな風に奪う奴が気になって仕方ないのだが、無理には聞けないし。
そう思った時。
綾瀬が一緒にいた奴らに、何かを言って離れ、花壇のブロックに腰かけた。
……体調悪い? 休むのかな?
ここからなら、窓を開けて話しかければ聞こえるだろうと思って、窓を開けた時。綾瀬がゆっくりと崩れて、ブロックの上に横倒れになった。慌てて、窓から飛び出して、綾瀬のもとに走った。
「綾瀬?」
綾瀬を抱えたオレの所に、気付いた小泉が走ってきた。
「俊、どした?」
「今、急に横に倒れて……」
「……く、じょ……? ご、めん……」
気づいた綾瀬がオレから体を起こそうとしたけど、ダメだったみたいで、そのままオレにもたれかかってきた。
「……くらくら、する……」
「保健室に連れてく」
小泉に手伝ってもらって、綾瀬を背負い、保健室まで進んだ。