「すみません、これはなんの肉ですか?」
「ん?ああ、オークだよ」
出ました! ファンタジー定番のオーク肉です!
しかし、なおさら銅貨五枚で食べられるとは思えませんね。
「安くないですか?」
「旦那が昼間狩って帰ったやつだからね。問題ないよ。あの人がしたくてやってることさ」
聞けば、旦那さんは宿屋と冒険者の二足のわらじを履いているらしいです。
さらに料理も旦那さん作。まあおかみさんも綺麗な人ですし、いい人っぽいのでそんな人と結婚しててもおかしくないかもですね。
んー、直接感想を言いたいですね。
そう言ったら呼んできてくれました。くれたんですが……クマ?
いえ、わかってます。人間です。
豆みたいな手合わせ錬成の錬金術師さん(っ!?寒気?)の師匠の旦那さんだって人間ですから。
きっと親戚なんでしょう。
オークを狩ってくるって言いますからある程度は予想してましたが、これほどですか…。
ん? クマ耳? クマ耳!
よく見れば旦那さんクマの獣人ですね。おかみさんは人間らしく、メルちゃんはおかみさんの血が濃く出たようですね。良かったです。いや本当に。……クマ耳も捨て難かったか?
ちなみに、最初案内してくれた子がメルちゃんですね。呼びに来てくれた時に聞きました。
後で聞いたところ、おかみさんはレイラさん、旦那さんはベアルさんというそうです。 次からそう呼びましょう。……ベアのベアル、いえ、なんでもありません。忘れてください。やはり今の私はおかしいです。
◆◇◆
夕食を終え、部屋に戻ったら魔法訓練再開です。
まずあれが本当に魔力かを確認しなければなりません。
魔力を手の方に集め、放出します。……うん、たしかに<魔力視>が反応しました。魔力で確定ですね。
魔力は個人か、種族かはわかりませんが、人によって色が異なるようです。リオラさんの魔力はエメラルドグリーンでしたが、私のは白銀ですね。ときどき白金が混じるのは<神聖属性適正>があるからでしょうか?
まあ今はいいでしょう。魔力の形をいじってみます。
……ふむ、やはり目に見えるのはいいですね。動きがよくわかります。目に見えるのでイメージもしやすいです。ボールのようにして体の周りをまわしてみたり、ボールを犬にしてみたり。鳥も作ってみました。これは、やばいですね。完全にハマりました。
……気がつけば同時に操れる魔力量が増えていました。一部をボールにしてとばし、残りを犬型に変えて取って来させる、なんて遊びをしたところで――寂しい人じゃありませんからね?――寝ることにします。
今日は疲れましたね。明日の講習が楽しみです。