(説教かよ、道永だって俺達と同じゲームをしようとしているじゃないか)

「あー、うん、やっぱり今回は止めようかな」

「遅い、もう引き返せない。返信し終わった」

 ヒョイッと携帯を投げ返される。途端、画面にはスタンプが乱れ打ち。振動が止まらない。

「え、マジか? はやっ!」

「今どうなってるか、見た方がいい」

 ひとまず文句は後回しにして、どんな内容を書いたのか確認していこう。

 俺に扮した道永がこう切り出す。

『俺、思い付いちゃったんだけど、いい? 道長に告ってオッケーさせたらツケをチャラにしてくれない? 逆に振られたらツケを倍にしていい』

 道永は俺の口調や言いそうな事柄を把握しており、奴等が疑いもせず次々と反応する。

『いやいや告るだけで許してやるって言ってんの(笑)』
『ひょっとして土壇場になって告るのに怖気ついたとか? いいから早く告れ!』

 田中と林はいつも通りのテンション。更に燃料が投下される。

『道永、俺の事好きかもしれん。屋上に誘ったら期待してたもん。どうする? 健太郎』

 ここで道永は健太郎を指名した。2人がおもしろ可笑しくはしゃぐのに対し、健太郎のリアクションがゼロだから?


「道永は屋上に誘われた時、嬉しかったの?」

 顔を上げた。道永は空を眺め、遠い目をしている。
 やや間があって首が横へ振られた。

「ついに不良グループに目を付けられたかと。殴られると思った」

「それであんな嫌そうな顔したのか」

「クラスメイトも同じ風に感じたはずだ。仕方ないよな? 茶髪、ピアス、制服も着崩してガラが悪過ぎる」