ここまで明に語らせておいて、俺が本音を告げないのはフェアーじゃない。
 
 明の家であのまま過ごす事も出来たが、そうしなかったのは?

 健太郎に会えばどんな目に遭わされるか分かっていた。なのにどうして?

「俺さ、もしかすると明を好きになっちゃったみたい」

 自分から明へ手を回す。と、すぐに同等、もしくはそれ以上の力で返された。

「ーーみたいじゃなく、本当に好きになってくれないか?」

「なんで?」

「なんでって……僕は君が好きだ。よく知りもしない相手、しかも同性に好意を持たれるのは迷惑かもしれないが、君がずっと好きだった」

 俺がした屋上での告白は明にどれほど失礼だっただろう。いたずらに好きと伝え、傷付けたに違いない。

「なぁ、自惚れていい? 明が生活費を節約してたのって」

「そうだ、最初はその金でツケを肩代わりしようとしていた。だが結局は親の金、自分の力で解決しなきゃ意味がないと気が付いたんだ。
 ねぇ、僕も自惚れていいか? 黙って出て行ったのは僕を守ろうとして?」

 こくり、頷く。お互いを想い合った行動は無謀かもしれない。けれどリスクをとったなりの価値はある。証拠に胸が一杯となって、優しい気持ちが溢れてきた。

「ーーじゃあさ、賭けをしない? 俺を惚れさせれば明の勝ち」

 提案にしかめっ面が笑顔へ変わる。

「いや、もう賭けはこりごり。今度はリスクもリターンも関係ない、掛け値なしでサツキを惚れさせてやるよ」

「へぇ、そりゃあ楽しみだ」

 こうして俺と明の罰ゲームは、未来を予感させるエンディングを迎えたのだった。