「サツキの携帯に位置情報が確認できるアプリをダウロードしておいた」

「……いつの間に。なぁ、夢じゃないよな? 俺、生きてる? 首の周りが痛くてしょうがない」

 今更、恐怖に襲われ強張る。視界の隅で健太郎がのびていても実感が沸かなくて。

「仮にこの場が天国だとするとーー僕は天使だな」

 明の手が震える俺の手を包む。

「いや、俺はひどい真似ばかりしたし、天国へは行けないよ」

「なら懺悔してみたらどうだ?」

「懺悔? しかめっ面な天使は、俺がかわいそうで同情してるんでしょ? 俺を許したりしないでいい」

 たぶん明は全部を把握しており、温かい指先から伝わってくる。

「同情? していない。好んで谷等と関わったのだから自業自得。だが、今回の賭けに参加したのはサツキを助けたかった」

「ーーえ?」

 ふわりと風が生まれ、気付けば明に抱き締められていた。

「こんな無茶をさせるなら最初に話しておくべきだったと反省している。僕はサツキのツケをどうにかしたくて、自分が賭けの対象になるよう仕向けた」

 俺じゃなく、明が懺悔をし始める。

「そういえばーー屋上に呼び出されて嬉しかったっていうの?」

「あぁ、谷を挑発し続けた甲斐があったなぁと喜んでいた。谷がサツキに酷い仕打ちをしているのも知ってたよ」

 2人で床に散らばるコスプレ衣装を眺めた。

「まぁ、健太郎は俺を女の子の代わりにしたくてーー」

「違う! 谷はサツキを自分のものにしたがっていたよ」

「いやいや、それは無いーー」

「俺には分かるんだ、同じだから」

 発言を2回に渡り遮られる。打ち消された俺の語尾が空中を彷徨い、とある不安を招く。

「健太郎と、お、同じ? つまり?」

「あ、いや、女装をさせる趣味はないぞ! それとサツキを女性の代わりなどしない。その、ええとだな」

 ここで抱擁に躊躇いが混じってきた。