うわぁぁ! 雄叫びに近い声を上げて健太郎が突進。避けようにも後ろにベッドがあり、そのまま勢いよく押し倒された。
 折り重なった状態から健太郎は俺の首へ紐を巻き付け、絞める。

「く、くるし、は、なして……」

「大人しく女装する? サツキが女だったらいいのに。まぁ、俺は優しいから男でも仲良くしてやるよ」

 小柄な俺の抵抗などびくともしない。酸素不足の視界は健太郎をますます歪ませた。

「すけて、助けて」

「いいよ、言う事をきくって約束しろ」

(ーーそれは無理)

 だって俺はもう知らない振りをやめるんだ。偽物の友達は要らない、寂しいのを誰かのせいにしたりしない。

(明のお陰で目が覚めたよ)

 明はしかめっ面ばかりして、説教くさいところがあるものの、ありのままの俺と接してくれた。隠し事はされたが嘘は無かったって信じたい。
 たとえ同情だとしても、こんなバカみたいな賭け事に足を突っ込ませたくないくらい明を大切に想っている。それが俺の応えだ。

(とにかく健太郎にキスされるなんて冗談じゃない! 首輪をかけられてたまるか!)

 反撃の機会を伺い、今だ! と思った時、ドアが壊れそうな音を響かせ開く。

 俺は健太郎の股間を蹴ろうとするポーズで侵入者と目が合う。

 侵入者はズカズカとベッドへ歩み寄るなり、無言で健太郎を吹き飛ばす。一連の流れはあっという間に行われ、仰向けの俺は壁にめり込むんだんじゃないかと心配になる衝撃音に薄目になる。
 様子を覗き込むしかめっ面はちゃんと誰か見えていた。

「勝手に居なくなるな」

 絶体絶命の場面で颯爽と登場したくせ、明は迷子みたいな顔をする。

「……よくここが分かったな」

 声が掠れるのは首を絞められていた影響だけじゃない。

 明はベッドに片膝を乗せ、俺をゆっくり起こす。その際、背中を撫でてきた。