健太郎がいきなり顔を寄せてきて、反射的にのけぞる。ニヤニヤ粘つく笑顔を暫く見せ付けた後、クローゼットを開けた。

「分かっていると思うけど、別に金が欲しいんじゃないんだよね」

 背後でバサバサと漁る音がする。何を引っ張り出しているのか見当がつき、振り向く事など出来ない。

「実は道永が告白にオッケーしたらって言ってきた時、怪しんだんだ」

「な、何を?」

 返事がうわずらないよう、正座したまま拳を握る。

「サツキと道永が手を組んで俺達を騙そうとしているんじゃないかと」

「そんな、まさか! 道永がなんでそんな真似するの?」

(落ち着け、落ち着くんだ)

 必死に念じ冷静を装う。明を巻き込まないと決めたんだ。もしも真実がバレれば、明まで健太郎のオモチャにされてしまう。

(あ、そっか。俺は健太郎のオモチャなのか)

 友達ーー明が言うところの悪友という言葉で、俺と健太郎の関係性に蓋をしてきた。その蓋が込み上げてくる嫌悪でカタカタ震え、ずれ落ちていく。

「前に道永にサツキのツケは幾らあるか聞かれて。盛った金額を教えてやったんだわ。かなりビビってて面白かった!」

「ツケの額を聞いてどうするの?」

「さぁ? ただ、ツケまみれのサツキに同情して手を貸したりしないか、疑ったよ」

「……同情って」

「かわいそうだと思ったんじゃない?」

「……かわいそう」

 お気に入りの衣装を抱え、俺の前へ戻ってきた。

「これ、着て。それからキスしようか」

「は? 何を言って」

「罰ゲームをするんだよ」

 健太郎は携帯電話のカメラを構え、顎で着替えを促す。