たぶん健太郎が賭けに乗る内容を送ってきた。田中と山田からスーパーでのやりとりを聞いているに違いない。

「あっ! 母さんからだ」

 画面を膝の上で確認しつつ、嘘を付く。

「はぁ〜やっぱり息子の誕生日はスルー出来ないのかも。ちょっと電話してきていい?」

「そ、そうか!ああ、もちろん。良かったな!」

 芝居がかって面倒に席を立つと道永がーー笑った。それはそれは自分の事みたいに喜ぶものだから俺の息が止まる。

「悪さしてないって、僕が説明してもいい」

 ニコニコしている。

(いや、作り話なんだって。母さんから連絡なんか来ていないんだ)

「説明に困るなら電話、変わる」

(お前、いい奴過ぎるだろ)

 どうしてそんなに嬉しそうなんだよ、気を抜くと叫んでしまいそう。このタイミングで笑顔を見せるなんてズルいじゃないか。

(駄目だ、道永ーー明を巻き込むのはもう止めよう)

 部屋を出て通話する仕草をし、そのまま玄関へ向かった。
 手付かずのケーキとクリームソーダに後ろ髪を引かれたが、俺に食べる資格はない。

(ごめん、ごめんなさい)

 心の中で繰り返した。