彼女は他校の子に違いない。同じ学校であれば健太郎あたりが見逃したりしないルックス、いわゆる清楚系。
 勝手なイメージで語るとお菓子作りが得意で、サラサラストレートヘアから優しい香がしそう。

「本当にごめんなさい」

 頭を下げてくる。俺は反射的に息を止めた。

「これといって予定がある訳じゃないが……」

 俺が黙ると道永が返事をし始め、2人は顔を見合わせる。

「面識がない人とは一緒に出掛けられない」

 至極真っ当な意見を言い渡された女の子達は一瞬で笑顔を消す。俺まで呆気にとられてしまい、場の空気が完全に凍った。

 道永だって逆ナンの意味は分かっているくせに、随分な言い回しをするものだ。自分の機嫌を棚に上げ、発言を批判したくなる。
 けれど俺が文句を切り出す寸前、道永はここから離れようとした。

「おい! どこ行くんだ!」

「話は終わっただろ? それに君が僕へ判断を委ねたんじゃないか?」

「そ、そうだけど。なんか、かわいそうじゃん?」

「かわいそう、ね」

 眉間を揉み、道永が切れ長な視線を流す。その腹の奥を掴むような威圧に女の子等は無言で逃げ出してしまった。

「あっ!」

 特に道永を好きそうな子は追い掛けた方がいいんじゃないかと身体が動き掛けるも、腕を掴まれる。

「ーー君はあぁいう女性がタイプなのか?」

「は? 俺はお前が変な噂を立てられたりしないようにって。あんな断わり方すると後で面倒になるぞ?」

「君が気にする事じゃない」

「顔はいいけど性格が最悪とか言われても?」

「それは君の意見だろ」

「……確かに。でも俺がそう思おうと、他の奴に思われるのは面白くないんだ。ほら、優等生の裏の顔を知っているのが俺だけって、わくわくする!」