(道永、どんな感想を言うんだろう?)

 俺はシンプルに道永を知りたいって感じていた。同じ本を読んで、飯を食って、遊んでーーもっと仲良くなりたいというか。

「道永は声出して笑ったりするの?」

「はぁ?」

 案の定、しかめっ面をされる。

「ぷっ」

 吹き出す俺に弓なりに上がった眉が少しだけ動いた気がした。

「……もう帰ろう」

「いいのか?」

「君は読書に飽きてしまったみたいだしね。他の利用者に迷惑は掛けられない」

 道永は立ち上がり、俺の肩へ手を置く。言い方はキツイけれど『行こう』と誘導する手付きは優しくて、速攻で支度を整える。

(てか、頭叩かれて喜んだりーー俺、ちゃんと躾られてるじゃん)

 道永は追加で本を借りにカウンターへ向かう。
 俺の思い出の一冊を携えた背中を眺め、透明な尻尾が左右に振れているって自覚した。

(そういえば犬の図鑑、探すのを忘れたな)