「俺を『君』って呼んだり『嫉妬』を漢字で書けたり、道永ってば本当に優等生なんだなぁ〜俺の周りに居ないタイプ」

 素直に感心してしまう。すると道永は形の良い眉を釣り上げ、ページが捲れそうな溜息を吐く。

「それを言うなら僕も同じだ。男性へ告白するなんて抵抗は無かったのか?」

「ん? お前、めちゃくちゃモテるじゃんか。抱かれたい男子ナンバーワンだって!」

「抱かれたいって……露骨過ぎる」

 ますます険しい顔付きになる。

「ね? この手の話題は女子の方がエグいよな。彼女に困らない道永なら俺に告られても笑って流してくれると思って。
 でも実際は逆にハメてやろうとか言い返してきて、性格悪いーー」

 言い掛けやめておく。イケメンならではの整った怒りの気配が漂い、これは地雷を踏んだ。
 慌ててチャームポイントのえくぼを作ってフォローする。

「ごめん、ごめん、冗談でも気持ち悪かったよな? けど、こう見えて男受けが良かったから。背はちっこいし、子犬みたいとか言われてるし?」

 頭の横に両手を翳し、犬の真似をしてみた。

「……子犬? 駄犬の間違いでしょ」

 愛想を振りまくもバッサリ切り捨てられる。

「き、厳しいな、道永は」

「罰ゲームじゃなく僕を好きだと打ち明けてきたなら、少なくとも気持ち悪いとは思わなかったよ」

「男同士に抵抗ないの? 俺はたまに男から告られるけど、正直困るぞ」

「自分がされて困る事を人にする? ガキっぽいな」

「は? 同級生じゃん? あ、俺は7月生まれのサツキ。しかも明日が誕生日!」

「誕生日なんて聞いてない。そういう所が子供なんだって」