「って、焦げてる、焦げてる!」

 黒い煙を指差すと道永は慌てて火を止める。しかし時は既に遅し、こんがりを遥かに通り過ぎた状態となる。

「改まって何を言うのかと思えば。簡単に懐くんじゃないよ! 駄犬!」

「は? なんで? 俺のせい? 懐いてないし!」

 俺はシャツから手を離し、腕組み。道永もお決まりのポーズをとる。

「心配しなくとも賭事はする。いい? ご主人様の言葉をよく理解するように! 分かったらお手!」

 眉間を揉んだ後、手の平をこちらへ向け『お手』を要求。すぐさま払い落とす。

「人を犬扱いするな!」

「ほぅ、朝食は要らないと?」

 次は目の前へ皿を差し出してきて、そこには作り直した目玉焼きとトーストが乗っていた。

「食うーーけど、俺のはそっちじゃねぇか?」

 焦げた方が乗せられる皿を取ろうとしたが、道永はヒョイとかわし自分の席へ置く。

「グダグダするな。食べたら出掛ける」

「どこに?」

「図書館。予約していた本を借りに行くんだ」

 道永はバターを薄く、かつ均等に塗る。

「本くらい買えばいいじゃん。小遣い足らないのか? 自炊して節約してるのに」

「こんなメニューじゃ自炊とも節約とも言えない。小遣いは貯めているんだ。直に目標金額になるけれど」

「何に使うか聞いてもいい?」