外が完全に明るくなると道永はリビングへ戻ってきた。

「朝食を作るぞ。トーストくらい焼けるだろう? 手伝え、働かざるもの食うべからずだ」

 明け方のやりとりを引き摺る様子はない。顎で指示を出す。
 もう口をきいて貰えないんじゃないかと思っていたのでホッとする。偉そうな口調でも従う事にした。
 トースターをセットしながら目尻を擦り、実はあれから一睡も出来なかったんだ。

「まだ眠いのか?」

「休みの日はまだ寝てる時間だしーー」

 横目でフライパンを見やる。ちゃんと2人分の目玉焼きがあった。

「時間だし?」

 水を入れ、蓋を閉じ続きを促す。

「追い出されるんじゃないかと」

「不安で寝られなかった?」

「ここを追い出されたら他に行く所ない」

「ーーはぁ、君は衣食住が確保出来ればいいのか?」

「あっ、違うっ、追い出されたら追い出されたで何とかなる! なんて言うか、その、えーっと」

 そろりそろり忍び足で並び、道永のシャツの裾を摘む。道永はもう着替えを済ませている。

「もう少し一緒に居たいって言ったら迷惑?」

 顔が赤くなるのが分かり俯く。本音を伝えるのは照れてしまい、たぶん耳まで染まっている。

「道永が言ったんだぞ? 自分で考えろって! 俺は健太郎達との賭けをしたいーー道永さえ良ければ」

 道永からの反応が途切れ、顔を上げた。

「き、君は……」

 道永は口元を覆い、俺を見詰める。