「でも1人って寂しくない?」

 傾げながら尋ねてみる。あの唇は間違っても寂しいなんて言わなそうだ。

「寂しいって答えたら何かしてくれる訳?」

「え?」

「どんな手段で励ましてくれる?」

「え、は? あれ?」

 予想外の切り返しで詰まってしまう。道永は更に眉間を揉む。

「もうひと眠りしよう」

 話を打ち切り、出ていこうとする。俺は1人で納得する背中へ投げ掛けずにはいられない。

「ま、待てよ! 何が正解なんだ?」

「正解とは?」

「道永はどうして欲しいの? 俺に」

 呼び止めに応じ振り向きはする。まったく期待していない顔付きをされ、俺は拳を握る。

「家に泊めてくれたり飯を食わせて貰った分くらいは返したい」

「あぁ、感謝の気持を示すのは大事だ」

「でしょ、でしょ? 俺にやれる事があれば言って。ギブアンドテイク!」

「はぁ」

 深く息をつく道永。

「誰にでも尻尾を振るみたいなご機嫌とりは嫌い、ついでに自分で考えない態度も。何事も言われてやるのと、自分から率先してやるのでは意味も価値も違う」

「へ?」

「僕は君に何かして貰いたいとか思っていない」

 こうして取り付く島もなく、出て行ってしまった。