「……飲まないんだな?」

「トマトジュース下さい! お願いします!」

 凄まれ、姿勢を正す。コップへ注がれたトマトジュースは鮮やか。道永は正面に座り直すと一気に飲み干し、濡れた唇を舐める。

「頂きます」

「どうぞ」

 道永の豪快な飲みっぷりに美味しそうと思えたが、そうでもない。青臭い。喉を通っていかず、ちびちび啄む。

「不味いなら寄越せ。僕が飲む」

 伸ばされた手にコップを渡す。受け取るやいなや空っぽとなり、また唇を舐めた。
 どうしてだろう? 道永に舐め取られるトマトジュースは美味しそう。

「あはは、間接キスだね。照れちゃう」

「……はぁ?」

「キスしたことあるの?」

「君はないのか?」

 質問を質問で返すのはずるい。けれど、会話が途切れるより返事をした方がマシ。

「ない」

 答えが意外だったのか、道永は一瞬だけ迷子みたいな目の動かし方をすると深呼吸した。

「年上の女性と遊んでいたのに?」

「嘘じゃない。本当にキスした事がないし、エッチも未体験〜ウケるでしょ?」

 ソファーを滑り落ちて床へ座ると、テーブルに顎を乗せた。道永はどの角度から眺めても整った顔立ちをしていて実に羨ましい。
 こういう顔立ちに生まれていれば、お姉さん達に相手をして貰えただろう。

「おかしくはないが意外、かな。君達は行為を目的に女性と遊んでいるのだとばかり」

「イメージ悪っ! ただ童貞なのは俺だけ。で、道永は?」