「ーーそれで僕を呼び出したと?」

「ゲーム中はあいつ等と接触するなって言ったのは道永だ。いつもなら誰かの家に泊めて貰ってた」

 ここは学校近くの公園。行き場のない俺は道永へ連絡してみた。どうせ断られると踏んでいたが、意外にもやって来る。

 塾の帰りだそうで制服のまま。補導されるのを警戒してか、しきりに周囲を伺う。

「この辺は見回りに来ないよ」

「何故、分かる?」

「誰も掴まらなかった時、ここで野宿してる」

 俺はブランコに腰掛け、道永は腕組みして立っている。

「いきなり泊めてって言われても困ると思う。だから飯代だけ、貸してくれない?」

 つま先で地面を削り、相談を持ち掛ける。チカチカ瞬く街灯に照らされ、影が情けなく伸びていく。
 仕方がないじゃないか。人間、どんなに絶望しても腹は減るんだ。

「……分かった。いいよ」

「え、いいの?」

「家を飛び出した理由を聞かされたら断れないだろ」

「てっきり断られるかと」

「ついで、だ。僕もこれから夕食を摂ろうと思ってた。それで君は何が食べたい?」

「サーロインステーキ!!」

 俺は立ち上がり、即答する。こんなチャンスを見逃せない。

「浅ましいな。ここぞとばかり、そういうメニューを言うなんて」

 眉間を揉む、道永。

「サーロインステーキは却下。時間も時間だし、消化のよい物を作ろう」

「作る?」

「あぁ、スーパーで買い出しをして僕の家に向かうぞ」

 道永は1人で結論を出すと歩き出す。