その日は久しぶりにあいつの夢を見た。あいつは蠱惑的な視線で俺を見て、自分でシテいた。
「!!」
 俺は訳が分からず、目をそらすことも出来ずに、ただバカみたいにぼんやりとその様を見ていた。自慰なら俺だってたまにしてる。でも、人の前でそんなことをするなんて……というか、そんなことを夢の中のあいつにさせてる俺自身に呆れた。あいつをそんな目で見てたのか、俺は……見てたな、確かに。他の人が気づかない、うなじのほくろを見つめるだけでも、劣情がまったくないとは言えない。
――起きたらパンツがガビガビだった。情けない。
 その日は一日あいつの顔がまともに見られない。こんなにも道端の石ころになりたいと思ったのははじめてだった。

「ねえ!」
 放課後。帰り支度をしていると、突然がたり、とあいつがこっちを向く。
「お、おう」
 びっくりしてはぷはぷしていると、あいつがにこりと笑う。
「交換、しない?」
「へ?」
 交換?なにを?
「ランボーの詩集」
「な、なんで?」
「んーなんとなく。学校でランボーの詩集の話できるの、キミだけだし」
 はい、と手渡された本はまるでおんなじのを俺も持ってるランボーの詩集。
「お、おう」
 おずおずと受け取った詩集は、なんだかほのあたたかくて。