中休みに、なんだかものすごくほのぼのした、毛繕い? を見られたので、心の中は、ホコホコしている。
三、四時間目連続の、地獄の時間、苦手な数学も、なんだか今日は楽しく感じちゃう。
それでニコニコしてしまっていたみたいで。先生に、指されてしまった。
お、自信あるのか? なんて、最悪の勘違いと共に。
ひえー。
全然分からなかったのにー!!
……前に出されて、黒板の前で、少し悩んだ後、全然分かりません、と正直に言ってみた。応用問題で難しいところだったから許されるかなと思って。
そしたら。
まさかの。皆の前で、まずここから考えてやってみて、みたいなやり方で、少しずつ解かされると言う……苦行をすることになってしまった……。
やっと解放されて、ふらふら机に戻った。
ダメだ、私。数学、ほんと苦手……。
よくこの高校入れたな……私……。
ていうか、これテストに出るの?
むりだーー……。
うーんうーん……。
毛繕い効果もさすがに消え失せて、地獄の数学を終えて、お昼時間。そのまま掃除に突入した。床をほうきで掃いていると。
「あのさ、マネージャー」
急に彰くんが話しかけてきてくれる。
「うん?」
「マネージャーって、数学苦手?」
「……うう。今日の通りです」
なぜか敬語で答えた私に、彰くんは、クスクス笑う。
こんな時でも、その笑顔は、超、癒される。
なんて思っていたら。
「彰」
「あ、瑛斗。ちょうどよかった」
「ん?」
廊下越しに話しかけてきた瑛斗くんにそう言ってから、彰くんは、私を見た。
「マネージャー、今日暇? 二時間位」
「……???」
「オレ、瑛斗に数学習うことになってんだよね」
「……うん?」
それが私に何の関係が……。
「一緒に、教えてもらう? テスト範囲の大事そうなとこだって」
「――――……え。いいの??」
彰くんのニコニコ笑顔を見た後、瑛斗くんを見ると。
瑛斗くんは苦笑い。
「いいけど、オレ、スパルタだけど」
え。私、お邪魔なのでは……。
……って、い、いえない、そんなこと。
「学校で残ってやろ、良い?」
「いいよ」
彰くんの言葉に、瑛斗くんが頷いて、じゃあ放課後なーと、歩いていく。
「あー良かった」
彰くんがクスクス笑って、私を見る。
「瑛斗、超スパルタなの。一人より二人の方がいいー」
「……そうなの?」
「あ、二人でも怖いと思うから、覚悟しといてね。でもそのかわり、すげーわかりやすいから」
「……う、うん……いいのかな??」
「何が?」
…………お邪魔……なのでは……??
「私混ざって……」
「え? 良いに決まってるじゃん?」
無邪気な。可愛い、彰くん。優しいんだよねぇ。こういうの、普通なら少しときめいちゃうよねぇと思うけど。あくまで、普通なら、と思ったその時、瑛斗くんが戻ってきた。
「彰」
「あれ、瑛斗。なに?」
「勉強前に飲み物買いに行こうぜ」
「あ、うん、分かったー」
「マネージャーもね」
瑛斗くんに言われて、うん、と頷く。
目の前で、彰くんと瑛斗くんが、一瞬見つめあって、ふ、と笑んで、それから別れた。
――――こんな感じを見てたら。
……そういう意味で、ときめこうとは、絶対思わない。私はもはや応援団みたいな気持ち。うふふ。