昨日からテスト週間になって、部活は休みになった。
 ……マネージャー業務は結構大変で、体力仕事だし、だからたまに休みとなると、ちょっとは解放された気分もある。

 でも、大好きなバスケに関することだし、男子バスケ部を応援する気持ちはたくさんあるし、だから、一日休みなだけでも、やっぱり寂しい。今週は金曜までテスト、午前で下校なので、土曜から部活は再開予定。

 ……部活がないと……。
 瑛斗くんと彰くんの、仲良い様が見れないんだよね……。
 という、少し不純な動機も、あって。早く部活再開しないかなあ、なんて思う。

 二時間めが理科で、なんだか難しい問題だったせいで、ぐったり。
 廊下側の席で、中休みだけど、なんだか立つ気もしなくて、しばし、ぼーっと頬杖をついていた。眠い……。

 そしたら、斜め前の方の、窓際の席。
 彰くんが、机に伏せて、微動だにしない。

 ……寝てるのかな?

 思わず、ふ、と微笑んでしまう。
 なんか、彰くんだと、寝てるだけで可愛いって、何なんだろう。
 とか、思っていたら、廊下、開いてる窓を、背の高い人が通りがかり、止まった。

「マネージャー? 疲れてンの?」

 頬杖ついたまま、ぽつんと座ってたせいなのか。
 珍しく、瑛斗くんに話しかけられた。

 ……こういうとこ。優しい。
 とは言っても、瑛斗くんは普段、女子に話しかけたりしないので、マネージャーやってて良かった、と思ってしまう。マネージャーってことで、部活の仲間として見てくれてるんだと思う。

「え、あ。うん、ちょっと理科で眠くなっちゃって……」
「あぁ、そういうこと……ならいいけど」

 笑って言いながら、彰くんの方を見た瑛斗くんは、ふ、と顔を綻ばせた。
 どき。と。自分に関係ない笑みなのに、ちょっとときめいてしまうくらい。
 優しく笑ってから。

「彰はいつからあれ?」
「うーん、授業中は気づかなかったけど……」

「そっか」
 言いながら、瑛斗くんは中に入ってきて、彰くんのところに近づく。
 教室の端と端。席が遠いので、瑛斗くんが彰くんにかけた言葉が何かは分からない。でも何かを言いながら、彰くんの髪に触れた。
 そのまま、彰くんの前の席に腰かける。

 彰くんが、眠そうに顔をあげて、目をこすってる。
 それを見た瑛斗くんが、ますます優しく笑って、彰くんを見つめてる。

 やっぱダメだーとばかりに、彰くんがもう一度、机に伏せた。
 すると。瑛斗くんは、ふっと笑って、その机に片肘をついて、顎を乗せた。

 目の前にある、彰くんの髪の毛に、ほわほわと触れてる。乱れたところを直してる、みたいな。

「何あれ。毛繕い中?」

 またまた通りかかった、バスケ部の子が、二人を廊下から見つけて、私にそう言ってくる。

 毛繕い……。
 あぁ、なんか、何の思いもそこにない人が見ると、そんな風に見えるんだと、驚き。
 ……私の中ではもう、公開でイチャイチャしてるように見えてたので、もう、笑ってしまいそうになりながら。

「毛繕いじゃないと思うけど……」
 そう返してみると、笑いながら通り過ぎていった。


 ……仲、いいなあ。
 ――――……きゅんきゅんしちゃうよー……。