こっち、気にしてないかなあ……なんて。
と思ったその時。
「彰」
……ふふ。瑛斗くん、登場。
予想通り過ぎて。
めちゃくちゃカッコいい瑛斗くんが可愛く見えてしまう。
私相手に、心配なんかしなくて、大丈夫なのに。
と、言ってあげたくなってしまう。
「いつまで休んでんだよ」
「だって両方解けたんだもん。時間かかるし」
「きつく締めねえからだろ……」
瑛斗くんが彰くんの前にしゃがんで、ちゃんと結べているかを確認してあげてる。
「瑛斗の力できつくしといて」
「……ん、おっけ。 次、三ポイント練習だって。戻ろうぜ」
「うん。 ……ん!」
彰くんは頷いて笑うと、手を瑛斗くんに向けて伸ばす。
「――――……」
ふ、と瑛斗くんが笑って。彰くんの手を取って、立ち上がらせる。
「ありがと」
ニコニコ笑って、瑛斗くんを見上げる彰くん。
「ほんと、瑛斗、優しい」
彰くんがそんなことを言いながら、瑛斗くんと一緒にコートに戻っていく。
……なんだかなあ。
……やりとりが、可愛すぎて。
彰くんが可愛くて。
瑛斗くん、そりゃ、優しくもなっちゃうよね。
「雪ー!、こっち手伝ってー」
「あ、はーい」
先輩マネージャーに呼ばれて、急いでそっちに向かう。
もうなんか私。
今の会話だけで、しばらく、何の仕事も笑顔でできちゃうよ~!
ま。もともと毎日、ちゃんとマネージャーの仕事はしてるんだけど。
めっちゃ笑顔で、何の苦もなく、できる気がする……。
あーもう、ほんと。
彰くんて、何であんなに可愛いのだろ。
なんか、ほんとに可愛すぎて、
私はすっかり、瑛斗くん側に立って、見てしまうんだよね。
瑛斗くんの立場だったら、ほんと、可愛がっちゃうだろうな。
先輩に呼ばれた仕事を終えて、コートの側に戻って、ボール拭きを始めて、少しした時。
あれれ。
なんか、彰くん、ムッとしてる。
でもって、もっとムッとしてるのは、少し離れたところにいる、瑛斗くん。
あれれ??
どうしたのかな。
私の離れているこのわずかな間に何が……。
気になるけれど、練習中だし、私もボール拭き忙しいし。
と思ったら、彰くんがこちらに向かって走ってきた。
「マネージャーごめん、このボールも、滑るから、お願い」
「あ、はーい」
彰くんがボールを私に向けて、ぽん、と投げた。
「そっちのボールのが綺麗かも。持ってって良い?」
「うん、いーよ」
拭こうとしていたボールのカゴから一つ持って、彰くんは、コートにボールをついた。
すぐ戻るだろうと思ったけど、少しの沈黙。
不思議に思って、彰くんを振り向くと。困った顔の彰くん。
「……どうかした?」
「ごめん、あのさ……」
「……うん?」
「さっきのさ、女バス行かなかった話ってさ」
「うん?」
「……他の奴に、話しても平気?」
「……ん?」
どういう意味?
「さっきの話って、あんまり知られたくないかなと思って」
「……? あ、女バスに未練が……とか? そこら辺の話?」
「うん、そこらへん含めて……とりあえず全部」
「別に隠してないけど……特に言いふらしてもないだけで……さっきも聞かれて、さらっと話したくらいだし……」
「瑛斗に話しても、いい?」
「瑛斗くん? えと。 うん、別にいいよ? 隠してないから。今は、男子のマネージャーすごく楽しくやってるから、全然良いし」
言うと、彰くん、ぱっと笑顔になった。
「他の奴には言わないから」
「うん……」
って、だから、別に隠してないんだけど……。
軽やかに走り去っていく彰くんに、しばらくの間は、なんだったんだろ、としばらく考える。
ふと。
急に、気づいた。
あー。
なるほど……。
私と何話してたか、聞かれたのかな、瑛斗くんに。
彰くん、さっきの話、していいか分からなくて、言わないでくれて。
そしたら、瑛斗くんが、怒っちゃった……? とか。
そんな感じ? ……かな?
想像でしかないけど。
――――……そんな気が、する。