練習が終わって、だいぶ顔色がましになった彰くんは、結局瑛斗くんに送られて帰ることになった。
 ていうのも、多分何も意図はない、「瑛斗、彰と家、近いんだろ? 送ってやって」という、キャプテンの一言があったから。

 すぐに、瑛斗くんは、「わかりました」と頷く。その答えを聞いて、キャプテンの解散の言葉で、皆それぞれ散っていく。


「瑛斗、もう平気だけどオレ」
「……送るし。 嫌なのか?」

 彰くんの言葉に、瑛斗くんがものすごく不満そうな顔でそう聞いた。

「え。いや……あー……じゃ、頼む」

 戸惑ったみたいに少しの間をおいて、結局そう言った彰くんに。

「つか、キャプテンに言われなくても、送るつもりだったけど」

 満足そうに少しだけ笑う瑛斗くん。
 ぷ、と笑って。彰くんは瑛斗くんの胸を、とん、と拳で軽くたたいた。

「帰ろ、瑛斗」

 また、にっこり笑う彰くん。
 その笑顔を向けるのは、ほんとに、反則だよね。絶対、可愛いもん。

 瑛斗くんと彰くん。 二人に恋して、日々キャーキャー言ってる女の子たちが不憫に思えちゃうくらい。
 二人の間に流れる空気は、優しい。

「カバン位持てるって」
「いい」

「持てるからいいって」
「いいって」

「瑛斗ってば」
「彰、うるさい、持たせろって」

 マネージャーの先輩たちと話しながら、なんとなく前を歩く二人の後ろ姿を目に写す。

 他の部員は誰も気にしてない。
 ただのじゃれあいだと思ってるんだろうなー。

 ていうか。
 二人ですら、自分たちがどう思ってるのか、分かってないのかも……。

 どう見ても、恋人同士ではないと思う。
 いまきっと、水面下でゆっくりと、きもちを育ててるところ。 な気がする。

 んー……。

 めっちゃ役得。 めっちゃ、楽しい。
 よし、明日もマネージャー、がんばろーっと!