私は、浜田 雪(はまだ ゆき)
 高校一年生。男子バスケ部のマネージャー。
 髪は肩までの髪を、部活中は一つに結んでいる。小柄だけど、元気。ちょこちょこ動くのは、好き。

 バスケをしてた父の影響で、小さい頃からバスケの試合を見るのが大好きだった。中学で女子バスケ部に入って、三年間頑張った。けれど、自分にはバスケの才能がないということを思い知った。理論は詳しいのに、それを体現できない。
 なので、きっぱり諦めて、それなら応援しまくろうと、高校生になってから、バスケ部のマネージャーになった。強豪校なので、皆、毎日練習に一生懸命。部員数も多いし、マネージャーも三年に二人、二年に一人、一年の私で四人も居る。それでも結構忙しい。
 
 やっぱりスポーツのできる人は皆それぞれカッコイイので、バスケ部員はすごくモテる。
 バスケ部のマネージャーなんていうと、女子は皆、良いなー、カッコいい人たちいっぱいの中で、うらやましい、なんて考えるみたいだけど、やってみれば分かる。

 カッコいい人をただ応援してるだけじゃない。 というか、むしろ、そんなの見てる暇はない。断然裏方の仕事がメイン。

 そりゃ、素敵な先輩はいるし、同じ一年の中にも、めちゃくちゃカッコいい男子も居て、全然、気にならないなんて言ったらウソになる。けど、恋愛対象としてよりももっと、気になる ことがあって、最近もう、ドキドキして、どうしようもない。


◇ ◇ ◇ ◇


 放課後、部活の時間。一年対二年の試合のスコアをつけながら、ふと、目立つ人に視線を向ける。

 結城 瑛斗(ゆうき えいと)くん。
 背が高くて、もう、文句なしの超イケメン。 

 鼻筋が通ってて、黙って立っているだけで凛とした雰囲気は、周りを圧倒する気がする。普段は飄々としていて、掴みどころがない感じ。そんなに熱い感情とかはあらわにはしない。なのにバスケの試合になると別人みたい。生き生きしてて、獲物を狙う動物みたいな、野性的な、カッコよさ。迫力があって、とても目を引く。普通の高校一年男子に、本気でファンを名乗る女子たちが居るのも、納得できてしまう。

 そして、もう一人。目を引くのは。

「瑛斗、後ろ!」

 よく通る声が響いて、瑛斗くんがパスを送ったのは、工藤 彰(くどう あきら)くん。
 バスケ男子の平均よりは明らかに小さめ。瑛斗くんとはだいぶキャラが違う。カッコいいけど、可愛い。サラサラの髪の毛。人懐こい笑顔。いつも人の中心で、おっきな声で話して、笑ってる。アイドルみたい。女の子とも気さくに話すし、男女問わず人気がある。先輩からも可愛がられてる。というか、全人類に可愛がられそうな人。

 瑛斗くんからもらったボールを、綺麗なフォームで、三ポイントシュート。綺麗に、すとん、とゴールに入った。背が高くなくても、バスケができるって、一人で証明してるみたいなプレイをする。

「よっしゃ……っと……う、わっ」

 入った瞬間、叫びかけた彰くんは、背後にいた先輩とぶつかって、二人まとめて転がってしまった。わー、大丈夫ですかーって、私も咄嗟に駆け寄るけど、なんだか邪魔になりそうで手は出せない。

「……ってー。 ……あきら、重い」
「すいませ……っ」

 彰くんに乗られて、文句を言ってる先輩と、変な風に倒れてうまく立ち上がれない彰くん。すると。ぐい、と脇の下に手を入れて、瑛斗くんが彰くんを引き起こした。

「いつまで乗ってんだよ」

 近くにいる彰くんに、瑛斗くんがぼそ、とつぶやく。

「……ありがと」

 なんだかちょっと不機嫌そうな瑛斗くんに、彰くんがそう答えて見上げると。瑛斗くんは、ん、と頷いて、くしゃ、と彰くんの髪を撫でた。 

 あ。まただ。
 毎日毎日近くで見てると、あ、と思う瞬間がある。

 多分だけど。


 きっと、瑛斗くんは、彰くんのことが。
 すごく、好き。

 でもって、彰くんも、きっと。