その日の部活、途中まで、二人は全く絡まなかった。

 いつもあれだけ絡んでるのに、誰も不自然に思わないのかなあ。
 もう、私にとっては、気持ち悪くて、むずむずして。

 でも、二回目の休憩の時。
 瑛斗くんが、彰くんの腕を掴んで、軽く引いた。

 振り返った彰くんは、無言のまま。
 瑛斗くんに引かれるまま。 二人で、体育館を出ていった。

 そわそわそわ。
 気になる。超ついていきたい。

 その時、先輩マネージャーが、私を呼んだ。

「雪―、ちょっとバケツに水くんできてくれるー?」
「はいっ!! 行ってきます!」

 ナイス! 先輩! いますぐいってきまーす!
 外に出る用事をくれた先輩に、超笑顔で返事をして、空のバケツを手にとると、ダッシュで体育館を出た。

 こっち方面に、体育館のシューズのまま進むなら、コンクリでつながってる、ここらへんしかないと思うんだけど……
 と案の定。

 外の水道の付近に、二人は居た。

 どうしよう。
 出るにも出れないけど。
 立ち聞きしてるにも、体育館から誰かきたらおかしいし……。

「……とに、なんでもないから」
「何で、オレにそんなこと、言うの」

 瑛斗くんの声と、彰くんの声。

「……だって、お前、気にしてるだろ?」
「してないし」

「つか…… してくれた方が、オレは嬉しいけど」
「――――……」

「……してるよな?」
「意味、わかんない、おまえ」

 彰くんの声が、笑みを含む。

「ほんとに何もねーから。事情、今度話す」
「……今じゃねえの?」

「ん。その理由もその時ちゃんと話すから、信じて」

 瑛斗くんのそんな言葉に。

「……ん、わかった」

 彰くんの明るい声が、そう返す。


 ――――……あ、大丈夫、そう。


 にしても、きわどい会話。

 気にしてくれた方が嬉しい、だって。
 ――――……はっきり言わないんだ。

 でも。
 美香のことだよね、この話。
 美香とはなんでもないからって、瑛斗くんて言ってるんだよね。

 それをわざわざ、普通は男友達同士で、気にもしないだろうし、弁解もしないだろうし。

 もうこの話をしてる時点で、もう、はっきり、お互いをどう想ってるのか、言ってるのと同じな気もするけど。

 でも、彰くんも、はっきりと返事はしない。ただ、笑ってるだけ。


 でも、二人は、それで良いみたい。




 ――――……なんか……いいなあ。この二人。